積水ハウス×東京藝術大学

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ステイホームスタディーズ

東京藝術大学との産学連携プログラム

9人の芸大生が見つめる、
家と家族の現在。

 東京藝術大学との連携授業「ステイホームスタディーズ」は、積水ハウスのオーナー様と学生のコラボレーションを通して、次代を担うアーティストを育成するプログラムだ。
 参加する芸大生たちは上野のキャンパスを出て、都内にあるモデルハウスや茨城県古河市の工場を見学し、積水ハウスの家づくりを体感。著名なアートコレクターによるレクチャーや、自邸やオフィスでクリエイティブな日常を楽しむ人々への訪問取材なども行い“アートのある暮らし”について視野をひろげてきた。普段は大学でつくること・表現することに集中する彼らにとって、アトリエから運び出された作品が、人々の暮らしをどのように彩り、作用していくかを考える貴重なフィールドワークになった。
 SEKISUI HOUSE meets ARTISTSで彼らが発表する作品は、そうした活動をベースにオーナーとのコラボレーションで結実する。家族にインタビューを行い思い出や夢のシーンを描き出す真鍋由伽子と川窪花野。設置する部屋のレイアウトにあわせてサイズや枚数を可変させる南谷理加と鈴木萌恵子の絵画。その家にある調度品や室内風景を独自の世界へ変換する辻明香里と赤星りき。そして、チョ・セイブン、五十川祐、吉原遼平は、自身の家/家族をめぐる記憶と、他者の家との接続を試みる。
 記憶、空間、家族の関係など“家”へのアプローチこそ異なるが、ほとんどの学生がその家に住まう人とのダイレクトなコミュニケーションを求めている。“家”は美術館やギャラリーなど展示用の“白い箱”ではなく、そこに住まう家族のライフスタイルによって千差万別、変化し続ける生活空間だ。ゆえに“家”とのコラボレーションは、建物やインテリアだけでなく、そこに生きる人々との共同制作へと必然的につながっていく。
 コロナ禍で、若者たちが“家”について思索を深めたこのプログラムは、その才能と感性を育んだ、各々の家と家族を見つめ直す契機にもなっただろう。9つの「ステイホームスタディーズ」は、小さくともこれからはじまる彼らのアーティストライフの原点になっていくはずだ。

宮本武典(SEKISUI HOUSE meets ARTISTS キュレーター)

ステイホームスタディーズ ♯1
真鍋由伽子
「相生のあの子の夢」
「茶室のあの人の夢」
「忙しいあの人の夢」

東京藝術大学大学院で銅版画を探究する真鍋は、寝室に飾るための小さな絵画を提案する。モチーフは、依頼者が見た“夢”のワンシーンである。注文が入ると依頼者から“夢”の話を聞き、イメージをリレーするように彼女自身の脳裏に浮かんだ物語のシーンを銅版に刻む。夢とは脳内に蓄積した記憶や情報が睡眠時に映像化されるもので、たいていすぐに忘れてしまうが、“描かれた夢”はその人の寝室で醒めることなく物語を暗示し続ける。本展のために3人の協力者から夢の話を聞き、参考作品として仕上げた。

サイズ・素材:H176×W236mm/雁皮紙にエッチング
価格:55,000円(税込)額付き

※版画制作に入る前にインタビュー(1回)を対面もしくはオンラインでさせていただきます。

まなべ・ゆかこ/1994年東京生まれ。東京藝術大学日本画専攻卒業後、大学院版画研究室に入学。日本画材料や版画技法を用いて絵をつくる。主な展示として個展「たたずむあの人」(伊勢丹新宿本店/2018)、「ART FAIR TOKYO 2018」(東京国際フォーラム)、「アートエキスポマレーシア(MECC)」など。2019年~2020年「ERASMUS+奨学生」としてポーランドへ留学。

「相生のあの子の夢」「茶室のあの人の夢」「忙しいあの人の夢」
真鍋由伽子
ステイホームスタディーズ ♯2
辻明香里
「〜→◎」

さかさまに浮遊する花瓶。さまざまなイメージが蠢く謎めいた絵だ。作者である東京藝大の院生・辻明香里によると、彼女自分が心に抱えている不安やトラウマを、絵のなかの花瓶に「封印」したという。よく見ると花瓶の口に入っていく小さな蛇がおり、その周囲に(蛇を食べる鳥)孔雀と、亀やヒトデなど吉祥を意味するモチーフが配されている。本作で辻は、依頼があればその家にある花瓶や壺も同様に描く。絵画の呪術性を感じさせるプロジェクトだ。

サイズ・素材:H803×W530mm/キャンバスに油彩
価格:176,000円(税込)

※絵画制作の資料として、描く陶器と納品後に飾られる場所の写真をご提供いただきます。

つじ・あかり/1996年生まれ、滋賀県出身。東京藝術大学大学院美術研究科絵画科油画専攻在学中。線による表現を軸とし、木炭、油彩を用いながら、自身が感じたことを婉曲的に表現した戯画のような絵画を描く。薄いビニールや、中目黒のトキメキ荘の浴室等にも描く。主な展示として「安宅賞展」(東京藝術大学内/2019)、「アートアワードトーキョー丸の内 2021」(丸ビルマルキューブ/2021)など。2019年度安宅賞、アートアワードトーキョー丸の内 2021 野口玲一賞受賞。

「〜→◎」
辻明香里
ステイホームスタディーズ ♯3
赤星りき
「ヒトハダ いえはだ」

東京藝大で壁画を学ぶ赤星は、家を“身体”に見立て、その肌に刻まれた生活の痕跡を観察する。壁や床に紙をあてて木炭で擦る“フロッタージュ技法”で、僅かな凹凸を丁寧に写しとっていく。新築の家ならまっさらで張りのある表情が、長く暮らした家なら子供たちのつけた傷さえも愛着のある記憶として浮かび上がるだろう。本作では依頼者の家で赤星がおこなう数十枚のフロッタージュをデザイナーが冊子化する。サンプルとして提示した2冊では、築60年の洋風平家を改修して暮らすM家と、赤星の居場所である芸大の絵画棟を写した。

サイズ・素材:A4(16ページ)/紙にオンデマンド印刷
価格:110,000円(税込)3冊、原画1枚付

※アーティストがご自宅に伺って現地制作する作品です。制作時間の目安は4時間です。

あかほし・りき/1997年広島生まれ。東京藝術大学美術研究科絵画専攻壁画分野修士課程在学中。ハノーファー専科大学メディアデザイン学部実験デザイン科留学を経て、広島市立大学芸術学部美術学科油絵専攻卒業、油絵専攻賞受賞。ひろしま地域リーダー認定。「すみだ向島 EXPO2021」(2021)参加。

「ヒトハダ いえはだ」
赤星りき
ステイホームスタディーズ ♯4
五十川祐
「Family meeting」

五十川のパズル型の絵画シリーズは、記憶が曖昧になった祖父との対話から着想を得たという。インタビューをもとに制作した絵画や写真をいったんバラバラにし、改めて被取材者に組み直してもらうのだ。他者の手と記憶が介在することで完成する風景画は、アーティストと被取材者との対話のドキュメントでもある。本展示では北関東に自邸を構えるH家に協力を得、夫と妻がそれぞれ育った“家の記憶”が、二人が建てたマイホームにどう継承されたのかをテーマに制作した。

サイズ・素材:H879×W332×D55mm/木材にUVプリント、写真
価格:330,000円(税込)箱額付き

※アーティストと依頼者が直接対話を重ねながら共同制作する作品です。対面での制作は2回を予定しています。

いそがわ・ゆう/1995年、東京都出身。東京藝術大学大学院美術研究科絵画科油画専攻在学中。絵画からパフォーマンスまで多岐にわたる媒体で制作。主な参加展覧会は「Tokyo Wonder Seed 2017」(トーキョーワンダーサイト/2017)。「Japanese Emerging Artists’ Exhibition in NY. JART8th」(WILLIAMSBURG ART & HISTORICAL CENTER/2018)、「ゆうれいたちの ソウマトウ」(東京芸術大学陳列館/2021)等。

「Family meeting」
五十川祐
ステイホームスタディーズ ♯5
チョ・セイブン
「Fruit mom (母が笑っているのを見ると切なくなる)

中国浙江省からの留学生で、現在は東京藝大大学院に在籍するチョが描いたこの静物画は、彼女自身の母親の肖像画でもある。作品「Fruit mom」でチョは、絵の依頼者から母親の思い出を聞きとり、その姿と(依頼者との)関係性を、果物に置き換えて描く。この絵でチョが描いた洋梨は、中国の実家に実際にあるソファーに座り、二人の子供に身体をかじられても堂々としている。果物に置き換えることで、それぞれの家族の愛おしい営みは、絵の中で福音のような色と物語を帯びていく。

サイズ・素材:H727×W530mm/キャンバスに油彩
価格:176,000円(税込)

※絵画制作に入る前にインタビュー(1回)を対面もしくはオンラインでさせていただきます。

儲靚雯/1996年、中国浙江省出身。東京藝術大学大学院美術研究科絵画科油画専攻在学中。内と外の世界を往来をテーマに絵画、立体、インスタレーションなど様々な手法で制作。参加した主な展覧会として「ポコラート vol.9」(アーツ千代田 3331/2020)、「群馬青年ビエンナーレ 2021」(群馬県立近代美術館/2021)、「SDGs x ARTs 展」 (東京藝術大学大学美術館/2021)、「裂織日常展」(旧平櫛田中邸アトリエ/2021)等。

「Fruit mom (母が笑っているのを見ると切なくなる)」
チョ・セイブン
ステイホームスタディーズ ♯6
吉原遼平
「マイホールプロジェクト」

東京藝術大学の壁画分野修士課程に在学する吉原は、オブジェ、映像、パフォーマンスなど、さまざまな手法を組み合わせて作品を制作する。本作「マイホールプロジェクト」で吉原が呼びかけるのは、自宅にひとつの“穴”を所有すること。それは壁に穿つ現実の穴でありながら、ウチとソト、自己と他者、私と公、男と女を行き来する眼差しや思考の通り道となる。掲示板に貼り出した QR コードをスマートフォンで読み込むと、プロジェクトの経緯と参加方法を記した特設ウェブサイトが開く仕組みだ。

サイズ・素材:可変
価格:110,000円(税込)工事費込み

※アーティストと依頼者が直接対話を重ねながら共同制作する作品です。詳細は特設ウェブサイト(1年間のみ公開)をご覧ください。

よしはら・りょうへい/1998年、広島生まれ。2021年多摩美術大学絵画学科油画専攻卒業。東京藝術大学美術研究科絵画専攻壁画分野修士課程在学中。レディメイドのオブジェと身体を組み合わせたインスタレーションやパフォーマンスを発表する。個展「Oh, My Body!」(b.o.p gallery/2021)、「SHIBUYA STYLE vol.15」(西武渋谷 /2021)、「blowing the wind」(烏山アートセンター/2020)等に出品。

「マイホールプロジェクト」
吉原遼平
ステイホームスタディーズ ♯7
川窪花野
「初心を灯す」

東京藝大の油画修士課程に在籍する川窪は、都市生活者たちの生活や、郊外の住宅地など、何気ない日常のシーンを描いている。作風は一見して軽やかでユーモラスだが、絵のなかの人々はみな無表情で、現代社会への風刺も忍ばせる。イラストレーターとしても活動する川窪の“初心を灯す”は、その家の“はじまり”をランプシェードに描くオーダーメイド絵画。“家が建った日”の晴れやかな光景が、その後の日々を照らし続ける。サンプルとして展示した本作は、織物工場を営む夫婦に取材して描いたもの。

サイズ・素材:H235mm、直径330mm/布にアクリル絵具、照明器具
価格:66,000円(税込)

※制作に入る前にインタビュー(1回)を対面もしくはオンラインでさせていただきます。

かわくぼ・かのん/1998年、東京都出身。女子美術大学卒業後、東京藝術大学大学院修士課程油画修士課程在学中。絵画とイラストレーションの間を基盤としたビジュアル表現をおこなう。主な展示として「ところにより通り雨」(the 5th floor/2020)、「アートのある〈間〉-僥倖 ほほえみのカタチ-」(新宿プリンスホテル・川越プリンスホテル/2021~2022)がある。

「初心を灯す」
川窪花野
ステイホームスタディーズ ♯8
南谷理加
「キャッチ!」

南谷は、彼女をとりまく日常で目に留まったものたち―人や植物、小動物などをのびやかな筆致で描く。本展では「最近気になって5~6枚描いている」というクモの巣をモチーフに選んだ。絵の中のクモの巣にくっついた絵具の「点」が、鑑賞する私たちの目線をも捉える。葉の隙間からそっと顔を出す昆虫は、日夜アトリエで絵画制作に没入するこの若い画家自身の姿だろうか。南谷の絵画=クモの巣は、オーダーにあわせてサイズ可変。ネイティブアメリカンが「良い夢」を捕まえるために吊るすドリームキャッチャーのように、絵画という想像の入口を家に掲げてほしい。

サイズ・素材:H727×W530mm/キャンバスに油彩
価格:176,000円(税込)

※絵画制作の資料として、納品後に飾られる場所の写真をご提供いただきます。

みなみたに・りか/1998年、神奈川県生まれ。2021年多摩美術大学絵画学科油画専攻卒業。東京藝術大学大学院 美術研究科絵画科油画専攻在学中。絵画を中心に制作。主な個展として「WONDERLAND I~III」(Bambinart Gallery 2020-2021)。

「キャッチ!」
南谷理加
ステイホームスタディーズ ♯9
鈴木萌恵子
「十字」

東京藝術大学大学院で油彩の制作研究に取り組む鈴木は、パネルを自作しようと訪れた建材店の倉庫で、角材や合板が整然と積み上げられている光景に惹きつけられ、以来、製材された木を細密描写するようになった。本作「十字」では、積水ハウスの建設現場から出た端材をアップサイクルし、数枚を依頼者の居住空間にあわせて組み合わせる絵画パネルを提案する。家のなかに、その家と同じ素材で“絵画を建てる”プロジェクトだ。

サイズ・素材:H390×W390×D30mm/廃材リサイクルパネルに油彩
価格:66,000円(税込)パネル1点の価格

※絵画制作に入る前にインタビュー(1回)を対面もしくはオンラインでさせていただきます。
※作品は一点からでもご購入可能です。

すずき・もえこ/1996年、千葉県生まれ。東京藝術大学大学院美術研究科絵画科油画専攻在学中。油彩で材木をもとに2次元と3次元の間を描く。近年の展示会は「SHIBUYA STYLE vol.15」(西武渋谷美術画廊/2021)、「鬼頭健吾×薄久保香推薦作家展」(西武渋谷美術画廊/2021)、「100 人 10」(ログズビル/2020)等。
ポートレート撮影: 新津保健秀

「十字」
鈴木萌恵子