美しい丘のある庭
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「未来の住まいのあり方」を考える
SEKISUI HOUSE–KUMA LAB の取り組み
積水ハウス株式会社/2025年2月20日
国内最大級のクリエイティブの祭典「Tokyo Creative Salon 2025」へ出展!!
3月13日より開催されるクリエイティブの祭典「Tokyo Creative Salon 2025」に積水ハウスとして初めて出展することになりました。
出展される学生作品 中間講評の様子
出展は隈研吾・東京大学特別教授が中心となって設立された「国際建築教育拠点(SEKISUI HOUSE – KUMA LAB)」によるものですが、展示されるのは、平野利樹特任講師のもと過去3年間で国内外から集まった24名の学生による個性豊な建築の未来像。「過剰性のニワ」をテーマにした作品が制作されました。
「過剰性のニワ」では、物質や情報が過剰にあふれる過剰性の時代に対し、建築という領域はどのように対応できるのかを問題提起し、学生たちが最新の生成AIテクノロジーを活用して、彼らのアイデンティティを含め個性豊かにそれぞれの「ニワ」で表現していきます。
学生展示 中間講評会の様子
「過剰性の時代に建築は AI と何ができる?」
今回、KUMA LABのスタジオで学生の指導を中心となって進めていただいた平野利樹特任講師は「過剰性のニワ」というテーマに対してこのように語られました。
「私たちはいま、物質や情報が過剰にあふれる『過剰性の時代』を迎えています。ある研究によれば、2020年ごろには地球上の人工物の総量が生物資源を上回ったとされ、このような物質の過剰性は、人類の活動が地質学的レベルにまで影響を及ぼす『人新世』という概念を生み出しました。これを受けて、『人工』と『自然』による従来の二分法も再考を迫られています。」
平野利樹・東京大学特任講師
「一方、この約30年間のインターネットの普及の過程で、人類は膨大なデータをネット空間に蓄積してきました。こうした情報の過剰性は、学習データを基盤とする生成AIの出現を促し、今や人間の介在なしに新たな情報を大量に生み出す段階にまで迫っています。これまで人間にしかないとされてきた創造性は、こうしたAIの台頭によって揺らぎ始めています。」
この問題に対し、生成AIという過剰性を生み出しているテクノロジーとの付き合い方を、新しい建築上のアプローチにおいてどのように組み込むことができるかを各学生が探求していくのだといいます。
過剰性が加速する時代と積水ハウスの取り組み
今回の作品制作に先駆け、今年度参加の6名の学生は、積水ハウスの資源循環センターの見学も行いました。全国に21か所ある資源循環センターは、各地の積水ハウスの施工現場で発生する廃棄物を回収し、分別、リサイクルを行う自社施設です。施工現場で発生した廃棄物は、まず現場で27種類に分別し、資源循環センターで60~80種類程度にまで再分別。自社の管理のもとで全て再資源化されています。積水ハウスでは1999年に環境分野において目指すべき姿と取り組みの基本方針を定め、2007年には自社商品の生産と施工(新築 、アフターメンテナンス、自社物件リフォーム)の4部門でゼロエミッションを達成しています
資源循環センターを見学する学生たち
全国各地の施工現場の廃棄物を回収し分別する
施工現場で発生する廃棄物のゼロエミッションを100%達成してきた積水ハウスの取り組みは、加速度的に進む過剰性の時代という課題に取り組む学生たちに違った視点での気付きをもたらしたのでしょうか?ある学生は見学後、このようにコメントしました。
「持続可能性やリサイクル、そして素材や資源について責任を持って考えることはあらゆるプロジェクトにおいても欠かせない要素だと思います。特に近年では、取り組むプロジェクトすべてにある程度の責任や重要性が伴うのが当たり前になっていると感じます。日本人ではない私にとって積水ハウスゼロエミッションセンターを訪れることはとても興味深い体験でした。私の国でも似たような施設がありますが、アプローチの方法に明らかな違いがあります」
生成AIが建築にもたらす可能性
ともすれば生成AIが人間しか持ちえなかったとされるクリエイティビティさえ奪い、建築家のみならずクリエイティブ分野が全てAIに取って代わられてしまうのではないか、と世の中では少なからず危惧されています。
こういった問題に対し、隈研吾・東京大学特別教授はこのように語ります。
「僕はその心配は全くないと思っています。今の時代にAIという新しい道具があっただけで、やはり人間のグループが創造しているってことに変わりはないのではないかと思います。むしろAIによって僕らのクリエイティビティは上がっているという気がしていますね。」
隈研吾・東京大学特別教授
ある学生の今回の課題に対してのアプローチは次のようなものでした。普段から自身の旅の思い出の記録として、旅先でのメモや旅券などをスクラップブックにまとめて個人的な旅のジャーナルを作っていたというフランス人の学生は、今回の課題でその旅のジャーナルを生成AIに読み込ませ、新たな別の旅のジャーナルを大量に創っていました。
それぞれ個性的な未来の建築へのアプローチがなされた
「人がある都市で生活しているとき、必ずしも自身の目で見て耳で聞いた情報だけで都市を体験しているわけではありません。例えば、スマホを見ながら都市を歩くことは、スマホというテクノロジーを介して都市を経験しているといえます。この先、生成AIによってそのような状況は加速していくと思います。私たちの感じ方は、自分自身によって決められているのか、それとも生成AIが決めたものなのか。私自身という存在自体も生成AIによって形作られたものなのかもしれない、という疑問まで起こりうると思います。」平野利樹特任講師はこの生成AIの活用方法にこうコメントしました。
「未来の住まいのあり方」とは
「国際建築教育拠点(SEKISUI HOUSE – KUMA LAB)」は大きなテーマとしてデジタルテクノロジーを活用して、「未来の住まいのあり方」の探求を掲げています。今回のプロジェクトを通して隈研吾・東京大学特別教授はこのように語りました。
「今までは住まいというと『家』という完結した物理的な存在だけのことを想像していたと思います。しかし、我々、人間という生き物で考えると、その家だけが住まいであるわけではなくて、そういうものも取り囲む全部の情報も含めて我々の住まいだと言えるのだと思っています。トータルな情報・環境が我々の住まいであると皆が実感として考え始めています。そして、それに基づいた家づくり・都市づくりがこれから求められていく。この積水ハウス×KUMA LABの使命があると思えるのです。それに応えていくことだと僕は思います。デジタルな力を利用することによって家を完全に拡張する、その研究が、私たちのKUMA LABで進めているところの重要な点だと思います。」
KUMA LABについて語る隈研吾・東京大学特別教授(左)と平野利樹・東京大学特任講師(右)
未来の住まいにおいても、”「わが家」を世界一幸せな場所にする”というビジョンのもと、この「国際建築教育拠点(SEKISUI HOUSE – KUMA LAB)」の取り組みは続いていきます。