人と自然の共生社会 活動方針②
徹底したデューデリジェンスによる持続可能な木材調達
「フェアウッド」の利用促進 → 木材調達を通じた持続可能な社会構築
活動報告
調達における「デューデリジェンス」の徹底
デューデリジェンス
ある行為者の行為結果責任を、その行為者が負うべきか負うべきでないかを決定する際に、その行為者がその行為に先んじて払ってしかるべき正当な注意義務および努力のこと。
DDに関しては、調査対象範囲を限定したり、
クリーンウッド法
正式名称は「合法伐採木材等の流通及び利用の促進に関する法律」。2016年に制定され、2017年5月より施行された。これまでのグリーン購入法が公共調達を対象としてきたのに対し、本法は民間企業にも合法材の調達を努力義務とした。
【デューデリジェンスの基本的な仕組み】
持続可能な木材調達の仕組みと進捗状況
~S・Aランク木材割合95%~
調達に当たっては、合法性はもとより、伐採地の生態系や住民の暮らしまでを視野に入れた「木材調達ガイドライン」10の指針を設定。約50社の木質建材サプライヤーに対して、2006年から毎年調達実態調査を実施し、調達木材の合法性や生産地、属性の報告を受け、ガイドラインに沿って数値化し、進捗を管理しています。2019年度は新たに調査に際して「熱帯泥炭林」についての確認を進めました。
トレーサビリティの確証が十分でない案件については、当社自ら生産地を訪れて確認や調査を行うなど、デューデリジェンスを徹底しています。
こうした活動によって、生態系の破壊につながる森林破壊をゼロにする「Zero Deforestation」の実現を進めています。
2019年度は、管理目標とするS・Aランク木材の割合について95%の目標を達成できました。当社では、コミュニティ林業の育成にも配慮して認証材だけを単独の目標にしていませんが、それでも内装設備を含むすべての木質建材のうち66%、構造材だけでは93%がFSC/PEFCなどの認証材(認証過程材を含む)となっています。持続可能な森林経営をしながらも認証取得自体の少ない国産構造材の採用が増加したことで、認証割合自体は低下傾向となりました。
「木材調達ガイドライン」10の指針
- 違法伐採の可能性が低い地域から産出された木材
- 貴重な生態系が形成されている地域以外から産出された木材
- 地域の生態系を大きく破壊する、天然林の大伐採が行われている地域以外から産出された木材
- 絶滅が危惧されている樹種以外の木材
- 生産・加工・輸送工程におけるCO2排出削減に配慮した木材
- 森林伐採に関する地域住民などとの対立や不当な労働慣行を排除し、地域社会の安定に寄与する木材
- 森林の回復速度を超えない計画的な伐採が行われている地域から産出された木材
- 計画的な森林経営に取り組み生態系保全に寄与する国産木材
- 自然生態系の保全や創出につながるような方法により植林された木材
- 資源循環に貢献する木質建材
調達ランク
各調達指針の合計点で評価対象の木材調達レベルを高いものから順にS、A、B、Cの四つに分類。10の指針の中で特に重視している①と④に関しては、ボーダーラインを設定。
合計点(最大43点) | 調達ランク |
---|---|
34点以上 | S |
26点以上、34点未満 | A |
17点以上、26点未満 | B |
17点未満 | C |
2019年度の調査実績
日本初の国産材認証制度SGEC 住宅の提供
当社は2019年に、個人住宅としては日本初の「SGEC/PEFCプロジェクトCoC 全体認証の家」を建築しました。SGEC/PEFC 認証の普及発展を進める「合同会社 森林認証のもり(吹田市、森匡子代表)」の住宅建設に協力したものです。認証取得に際しては、建設に使用されたすべての木材などのうち、70% 以上が国産の認証材で、それ以外の木質由来の部材に関しても壁紙・襖紙などの紙製品も含め、適切に管理された森林由来のものであるかの確認作業を行いました。すべてのサプライヤーに樹種、産地、現地の
NGO
Non-Governmental Organizationの略称で、民間人や民間団体のつくる非政府組織。
専門家による活動に対する評価
「フェアウッド」による持続可能な木材調達について
世界で広がる「デューデリジェンス」と「フェアウッド調達」
約15年にわたって動向を見てきた専門家の視点から見ると、積水ハウスの「
フェアウッド
木材供給地で伐採する際に、その地の森林環境や地域社会に配慮した木材や木材製品のこと。
ESG
環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字を取ったもの。今日、企業の長期的な成長のためには、ESGが示す三つの観点が必要であるという考え方が世界的に広まっており、企業の株主である機関投資家の間でも急速に広がっている。
DDの分野では認証材割合を増やすことがよく目標に掲げられる。森林の農地転用が世界中で急速に進む中、認証制度自体は森林減少を担保するための可視化されたツールだからだ。ただ、積水ハウスの場合は認証材活用を最終目標にせず、DDを通じた潜在リスクの洗い出しと、未来の地球への投資という視点から調達が行われている。例えば、国産材のブランド化などの国内生産者支援、小規模で認証取得のハードルが高いアグロフォレストリーなどを行うコミュニティ林材の評価がその例だ。DDは本来、画一的なものではない。最適化してオリジナルのものをつくることが各企業にとって一番効率が良く、同時に他との差別化の要素となり得る一つの好例だといえるだろう。
気候や気温を調整してくれていた生態系豊かな天然林や熱帯林は急速に消失しているが、日本の木材業界や消費者には危機感がまだ十分にないようだ。今後は、自社内での取り組み深化にとどまらず、消費者やサプライヤーなどを介して、建築産業や周辺産業に対し、地球の未来への投資という考えをさらに広められることを期待する。