男性の育休取得が当たり前になる社会を目指して
積水ハウスでは、社員とその家族が幸せであってほしいとの思いから、2018 年9 月より男性社員の育児休業1 カ月以上完全取得を推進しています。2019 年からは、9 月19 日を育休を考える日」として記念日に制定。「男性が当たり前に育休を取得できる世の中にしていきたい」というビジョンのもと、産官学で男性育休を考えるプロジェクト「IKUKYU.PJT」を毎年実施してきました。6 年目を迎える今年は、本プロジェクトの一環として「男性育休白書2024 発表会」を開催。男性の育休を取り巻く環境の変化や最新の動向、育休取得者の実体験などを紹介しながら、男性の育休取得をよりよい社会づくりのきっかけとするための課題についても探りました。
プロジェクトムービー「僕は知らなかった」
6 年目となる「IKUKYU.PJT」。今年は、過去最高となる154 の企業・団体にご賛同いただき、さまざまな情報発信や施策をともに展開しています。育休取得者の実体験をベースに制作したWEB 動画「僕は知らなかった」では、賛同企業・団体のご家族の映像や写真をつなぎ、リアリティにこだわったプロジェクトムービーに仕上げました。育休取得で得たさまざまな気付きや体験を通じ、育休は取得者本人や家族にとって新しい幸せに出会える選択肢になるかも知れない、といったメッセージを発信しています。
男性育休をめぐる社会の変化と新たな課題解決に向けて
~「男性育休白書2024」トピックス、当社の取り組みについて~
積水ハウスでは、2019年から男性の家事・育児実態を把握するためのアンケート調査を実施し、その結果を「男性育休白書」として毎年発行しています。男性育休に関する当社の取り組みをはじめ、「男性育休白書2024」のトピックスなどについて、執行役員 ダイバーシティ推進部長の山田が説明を行いました。
取得の障害になりうる要因を制度で解決できるよう工夫
積水ハウスでは、私たちの根本哲学である「人間愛」を企業理念とし、“「わが家」を世界一幸せな場所にする”のグローバルビジョンに基づき、日本でも男性の育休が当たり前になる社会を目指して取り組みを進めています。人財価値向上のためには従業員の自律を支援することが大切だと考え、男性育休は従業員の家族の幸せの基盤づくりとして位置付けています。
当社の男性育休制度の概要についてご説明します。運用開始は2018年9月、取得対象者は3歳未満の子を持つ当社社員です。主な特徴は、育休1カ月以上の完全取得を推進している点、最初の1カ月を有給としている点、そして最大で4回に分割して取得できる点が挙げられます。また、2022年10月より「産後パパ育休」の運用が開始されましたが、当社ではこれに先駆け2021年4月より「出生時育児休業」の運用をスタートし、男性育休制度を拡充いたしました。母親の産後うつの防止や父親のサポートが最も求められる産後8週の期間内に、1日単位で何回に分割しても取得できるよう、柔軟性を持たせた制度となっています。
当社では男性が育休を取得する際、まず「家族ミーティングシート」を作成します。育児休業をいつ、なぜ取得したいのか。そして、家事や育児の細かな役割分担について、現状・育休中・育休終了後にそれぞれどのようにするのかを家族で話し合うためのツールです。育休取得前に家族でしっかりコミュニケーションを図ることが、有意義な育休や家族の幸せにつながると考えています。
2024年8月末時点で取得対象である男性社員の累計は3,206名、その内、取得期限を迎えた対象者2,138名全員が1カ月以上の育休取得を完了しており、2019年2月より取得率100%を継続しています。
男性の育休取得率・取得日数ともに大幅に増加
「男性育休白書2024」について、この6年間での変遷とともに見ていきます。男性の育休取得率は、2019年の調査開始以来最高の27.3%となり、6年間で2.8倍も増加しました。2025年度には、育児休業取得状況の公表義務化が従業員数1,000人超から300人超の企業へと拡大されることから、さらなる増加も期待できそうです。男性の育休取得日数は平均29.9日で、こちらも過去最高に。6年間で12.6倍と大きく伸びた背景には、取得日数1週間未満の人が減り、6カ月以上の人が増えていることが挙げられます。
男性の育休を取得したい気持ちが長期化の要因に
2人目以降で初めて育休を取得した人の割合が、36.8%を占めました。「以前と比べて育休を取得する人が増えた」「会社の理解が良くなった」など、社会全体が育休を取りやすい環境へ変化していることが、その理由にあるようです。さらに2人目以降の育休取得日数は129.9日と長期化傾向にあり、男性育休の平均29.9日と比較すると4倍以上に。「1人目を経験し、少しでも長く取得した方がよいと思った」「子どもの成長を共に感じたかった」など1人目の育休経験による気づきや、「子どもが2人になり、妻の負担を軽減したい」といった動機が挙げられました。
育休取得日数は家庭や職場での男性の意識にも影響
「子どもと一緒によく遊ぶようになった」「妻の負担を理解できるようになった」など、育休取得日数が長い男性ほど、家庭におけるポジティブな変化を実感していることがわかりました。また、職場復帰後の男性の意識にも変化が。「子どもがいる人へ、より一層配慮するようになった」「お互い様という気持ちや行動が増した」「時間管理の意識が増した」といったプラスの効果が生まれ、取得日数が長くなることでより意識は高まる傾向にあります。
夫の育休への満足度が女性の仕事への意欲も高める
夫の育休への妻の満足度は、取得日数が1カ月未満では58.9%であるのに対し、6カ月以上では78.8%と、夫の育休取得日数が長いほど女性の満足度は高くなっています。また、夫の育休への満足度が高い女性ほど自身の仕事への復職率が高く、復職時期も早い傾向が明らかになりました。同時に、夫の育休期間が長い女性ほど、自身の仕事やキャリアに対する意識にプラスの変化があることもうかがえます。
育休を取得しただけで満足している男性も少なくない
妻の42%が、夫の育休を「とるだけ育休」と評価。男性は「とるだけ育休」との認識があっても、取得したこと自体に満足している傾向が強いようです。育休取得日数が長くなると、男性の「とるだけ育休」の意識は低下するものの、女性は夫の取得日数が1カ月以上でも約4割が「とるだけ育休」と感じており、男女間で意識のギャップが見られました。
意識ギャップを埋めるカギはコミュニケーション
男性育休白書調査対象の一般女性と比べ、当社社員の妻は、夫の育休を「とるだけ育休」と感じる割合は低いことがわかりました。また、夫の育休取得に対する妻の満足度の比較においても、当社社員の妻の満足度は79%と、一般女性の回答を15%近く上回っています。冒頭に紹介した「家族ミーティングシート」の活用などによって、家族間のコミュニケーションを充実させることが「とるだけ育休」の解消につながっているではないかと考えています。
日本における男性の育休取得率が過去最高となる中、新たに見えてきたのは、育休の質をいかに高めていくかという課題。夫婦や家族で、育休を取得する目的、取得期間、家事・育児の役割分担などについて、しっかり話し合うことが大切だと考えます。育休取得は家族にとっても自分にとっても、新たな幸せに出会える選択肢にもなるものです。積水ハウスはこれからも男性が当たり前に育休を取得できる社会づくりを応援してまいります。
〈男性育児休業 取得体験談〉
育休後も、家族みんなで家事・育児をフォローし合える環境づくりの期間に
第4子の出産にあたり、2度目の育休を取得
私は当社に転職した翌年、最初の育休を取得しました。当時、第3子は2歳。妻も働いていたため、上の子ども2人の春休みや夏休み期間を中心に、31日間を分割で取得。本格的な家事・育児に、初めて取り組みいろいろな経験ができました。そして、今年2月に第4子が誕生し、2度目の育休を取得。6年ぶりの新生児の育児を、家族みんなで楽しんでいます。
育休取得にあたっては、出産予定日の半年前に上長とグループメンバーに報告。「取るか、取らないか」ではなく、「いつ、どのように取るか」というところから話がスタートでき、前向きに考えていくことができました。
想定される課題を踏まえ、対応策を具体的に検討
育休取得にあたっては、現在の部署に異動して初めて経験する繁忙期に、出産予定日が重なることが課題の一つでした。また、家庭においての課題は、出産後の妻の入院期間中や出産後1カ月の外出が難しい期間をどう乗り切るかということ。具体的には、第3子の幼稚園バスの送り迎えや、平日夕方の習い事の送り迎えをどうするかといった点です。両親はお願いすれば協力してもらえる距離に住んでいますが、今回はできる限り家庭内で完結できるようにしたいと、妻と話し合いました。
こうした背景を踏まえ、産後8週間は1日単位で取得可能な「出生時育児休業制度」を活用。1週間の内、月曜日は在宅勤務、水・金曜日は出勤日とし、仕事も家事・育児も2日以上連続で穴をあけずに両立できるようにしました。仕事では、できる限り翌日に業務を残さないよう対応していましたが、グループメンバーにはいろいろフォローしてもらい感謝しています。家庭においても、出勤日前日に翌日の食事を作っておくなどの工夫もしていました。
新しい家族の子育てを家族みんなで楽しむ
育休の1カ月はあっという間に終わってしまいますが、家事・育児はその後もずっと続きます。そこで、「育休後を考え、育休中に何をするか」を妻と話し合いました。第3子の育休時は、「妻を理解する、家事・育児の全体量を把握する」をテーマに、私自身がとにかく全部やってみることを目標に掲げ取り組みました。今回のテーマは、「家族全員で子育てを楽しむ」こと。親だけで家事・育児を抱えこまず、子どもたちも一緒に家事・育児に参加してもらえるよう促すとともに、自分のことは自分でできるようにするためのサポートも行っていこうと考えました。
まず、「家族ミーティングシート」をベースに、現状・育休中・育休終了以降に分けて家事・育児の比率を明確化。現状では妻にほぼ任せっぱなしになっていましたが、育休中の家事はほぼ私が行うことに。そして、育休中に家事・育児を子どもたちにも担当してもらうことで、育休終了以降の家事・育児比率を「私4割、妻4割、子ども2割」とすることを目指しました。
家族会議を踏まえ、会社に育休取得申請書を提出。どの業務を、誰に、どのように引き継ぐかを上長と相談しながら記入していきました。また、申請書にはパートナーからコメント記入欄があり、「すべてを負担してほしいわけではない。家族みんなで協力し、家事・育児の大変さや楽しさを互いに共有できる雰囲気をつくってほしい」と、私への期待を示してくれました。
子どもたちの成長を通し、家族の幸せを実感する日々
保育士になるのが夢の長女は、赤ちゃんのミルク、おむつ交換、お風呂、寝かしつけなど積極的にやってくれています。二女・長男には、食器を片付ける、洗濯物をたたむ、ミルクをあげるなど、楽しくできそうなことからお願いしていきました。はじめはどうしたらいいかわからなかったことも、家事・育児に興味を持つことで自らやってみるように。最近では、本の読み聞かせをしたり、離乳食をあげたりと、育児も楽しみながら取り組んでいます。
私の場合、第3子で育休を取得できたからこそ、4人目を考えることができました。4人の子育ては大変そうに見えるかもしれませんが、家族みんなで家事を分担すれば負担は5分の1に、成長を楽しむ家族の幸せは5倍になると実感しています。
育休取得は、職場のメンバーをはじめ、両親や家族のフォローがあってこそ。感謝の気持ちを忘れずに、仕事も家族との時間も充実させていきたいと思います。男性の育休がもっと世の中に深く広く浸透していくように、自分の経験が次の取得対象者のいい前例になればと願っています。