gm マンション考 Vol.7
照明計画
①リビング
光の重心が低い照明の例。
ロイヤル九谷のスタンドが落ち着いた雰囲気の照明を。
(グランドメゾン大手前タワー)

照明計画

光の重心が高いと明朗で活発な印象があり、低いと落ち着いた雰囲気が生まれる
今回は、積水ハウス大阪マンション事業部 設計室室長芝 哲也 氏の「照明計画」考です。
心地よい照明計画とは、空間を照明によってグレードアップさせる演出テクニックのこと。そのポイントになるのが、太陽と炎の関係性に置き換えられる“光の重心”を考慮に入れた創造性豊かな空間プランなのです。

 日本語で言う“光”と“照明”は、英語では“ライト”と“ライティング”。光の進行形、延長線上にあるのが照明です。一方、日本語では光と照明は別々の言葉で、自然で心地よい光の延長にあるべきライティングは、近年の日本では照明という字のごとく、明るく照らすだけの機能になってしまいました。
 大切なのは照明を“光”として扱うこと。さらに、その“光”である照明の目的と効果を状況別に考えていくと、本当に心地よい空間をつくるための照明計画とはどんなものか、ということが見えてくるはずです。

太陽と炎でイメージする、光の重心

 光には“重心”があります。天井に照明器具を付けて部屋全体を照らすと光の重心は高く、フロアスタンドやテーブルスタンドなどは光の重心が低いと言えます。光の重心が高いと明朗で活発な印象があり、低いと安定感やあたたかな安らぎのムードが生まれてくる。これは「太陽と焚き火(炎)」の関係性でイメージすると、わかりやすいでしょう。
 昔から自然に馴染んできた太陽の光と炎の光。場所に応じて太陽にするか、キャンドルにするか、暖炉の炎にするかをイメージすると照明計画も楽しくなり、その使い分けのテクニックも理解しやすくなります。

太陽と炎でイメージする、光の重心
  • リビング
    シーリングを消してフロアースタンドによる照明。リラックスする空間を演出。(グランドメゾン南船場)
  • リビング
    シーリングをつけると部屋全体が明るく活動的になる。(グランドメゾン南船場)

日本の光の文化を変えた陰影のない明るさ

 照明計画において、電球の使い分けをすることも大切な要素です。炎に近いその色味でくつろぎ感や雰囲気を演出するのに適した白熱球。一方、フラットな光で空間を満たし生産性を高める蛍光灯ですが、この明るさが日本の文化を変えてしまったとも言えます。
 もともと、日本の光には情緒や風情といったものがありました。例えば、白い障子を通して入ってくる光。舞妓さんの化粧、友禅染の着物や西陣織の帯も、淡い光の中で本当の美しさが見えてきます。そんな味わいのある光の存在に、今一度目を向けたいものです。

ダイニング リビングダイニング エントランスホール
  • ダイニング
    飾り棚を演出する間接照明、折り上げ天井の間接照明、ペンダントライトが食卓の上を優雅に照らすムーディーな演出。(グランドメゾン等々力)
  • リビングダイニング
    モダンな意匠の空間にシャープなデザインの照明で印象的な演出。(グランドメゾン南青山)
  • エントランスホール
    天井をルーバーで隠すことで、空間の意匠性を高め「和」の落ち着きを演出。(グランドメゾン松栄町)

グレード感あふれる住空間をめざして

 グランドメゾンが考える照明計画。それは光の重心であり、もともと日本に息づいていた情緒ある光を演出すること。より上質な心地よさを追求し豊かさを重視した、贅沢で優雅な住空間の提案です。
 照明計画とは、照明だけを考えるのではありません。まず、ロケーションに応じてどういう住まいをつくるかという建物の計画があり、その建物の性格に応じた空間、インテリアがあり、そのインテリアを引き立てるための照明計画が生まれてくる…という一連の流れによって空間のもっているポテンシャルを最大限に引き出すことです。
 ホテルのようなグレード感と、お客さまの住まい方をあらゆる方向からイメージした空間づくり。それが何より、心地よい照明計画につながっていくことだと思っています。

エントランスホール ファサード
  • エントランスホール
    ブラケットと、光源を見せず天井を下から照らす照明で上昇感を演出。(グランドメゾン六甲カネディアンヒル)
  • ファサード
    都心部のマンションとしてシャープな印象の照明に。(グランドメゾン大濠南)
※ 積水ハウス株式会社 大阪マンション事業部 設計室 室長
芝哲也/しばてつや

※ ここに掲載の情報は2004年時点の情報に基づいています。