和室
格式をもたせる和室は洋と和の“しきり”が重要
和室は、多様な使い方ができる空間です。お客様を接待する場から寝転がってくつろぐ場まで、フォーマルにもインフォーマルにも対応する幅広い用途が考えられます。これは“和室”という言い方にも表れているもので、居間、食堂のように明確な用途を示さず、部屋の内装形態を表しています。
また、和室には「間」という表わし方があります。この「間」は、柱で創られる広さを意味するもので、家屋内の区切りを示します。そしてこれらは障子や几帳、ふすまなど“あいまい”な「しきり」で区切られます。隣の部屋から伝わってくるもの、建物の外部から感じるもの。障子などを通して、鳥の声や太陽の光の変化などを気配として感じ、それによって移りゆく季節と情緒を味わうという、日本人の美意識に通じるものです。しきりを取り除いた場合は大広間が生れます。壁の文化である欧米とは異なる、拡張性を持った柱の文化と呼ばれる所以です。
東と北の2方向に枯山水の庭園を設えた本格的な座敷。(グランドメゾン京都御所西)
和室の手前に落掛けや縁甲板張りの廊下を設け、洋の玄関ホールにしきりを与えている。照明の演出も効果的。(グランドメゾン白壁櫻明荘)
和室の最も大きな特徴である畳は、奈良時代に寝床として木製の台に置かれていました。平安時代には板の間に部分的に座具、寝具として置かれ、位の高い人などは高く重ねて使ったと言います。この頃は、畳のあるところは身分の高い人や客人が座る場所という感覚があったようですが、鎌倉時代頃からは部屋全体に敷き詰められる床材になっていくのです。
ちなみに、畳の存在から生まれたのが座るという日本特有の文化。旧来の和室に施された意匠や佇まいは、座った状態での視覚的なバランスを考え、格調が出るよう考慮されているのです。
また、鎌倉・室町期頃に登場したと伝えられる「床の間」も、和室の代表的な意匠。武家社会に広がった書院造りの意匠は、上座の位置関係をはっきりさせる目的や、ものを飾る場所という発想で生まれました。
リビングダイニングと一体のアクセントタイルの壁や天井のクロス、床の壁は表状が違うアクセントクロス。黒のスチール製床柱や黒の床板がポイント。(グランドメゾン・デザインセンター)
リビングダイニングの洋風デザインと調和させるディテール。敷居と壁は曲面処理で枠を消し、梁を出さずスッキリとした和室に。(グランドメゾン・瑞穂公園南)
和室には、格式を重視した空間としての独立型と、他の部屋との続きのスペースとして必要な時に目的に合わせて使用する空間としての多用途型があります。ここでは独立型の和室を「座敷」、多用途型の和室を「和室」と呼びます。「座敷」の場合は、旧来の座敷の決まり事を守りながら、洋風化している他の部屋とのバランスを考慮します。それぞれのつながりに違和感がないようなデザインを導入し、部屋の中からも季節感や自然が感じ取れるような設えを目指しています。
一方、多用途型の「和室」の場合は、シンプルさやモダンな内装を施した“数寄”的空間にすることにより、他の部屋に続く空間としても違和感のない、フレキシブルな和空間になる工夫をします。
これにともなって天井や建具などの構成部材のディテールやデザイン、照明や空調など設備計画、外観まで含め色々な角度から常に検討しています。
現代の生活に合わせた多様性のある新しい「和室」。特に多用途型の和室は、ライフスタイル、ライフステージごとの変化に応え、新しい使い方の提案を取り込んだ和空間造りを行っていきたいと考えています。
空調設備も欄間風に隠して目立たない配慮を。(グランドメゾン白壁櫻明荘)
※ ここに掲載の情報は2004年時点の情報に基づいています。