眺望
積水ハウス株式会社 大阪マンション事業部
設計室2課 課長 中田 祐之
分譲営業部 店長 迫田 秀樹
分譲営業 4課 課長 木川 祐之
(2007年現在)
自宅のリビングで寛ぎながら、昼は山並みや海岸線、夜は輝く夜景を眺めるというのは、この上なく贅沢な時間です。しかし、タワーマンションの高層階からの眺めだけを「眺望」と呼ぶわけではありません。お住まいの方が毎日そこに見る景色が、高層階、低層階のどの部屋からであろうと美しいものとなるよう設計段階から意識しています。
「風景に手を入れることはできません。ですから、マンションの周辺にある様々な要素を眺望の『素材』と捉え、どのように美しく心地よく見せるかが、設計者の腕の見せ所です。その高さから何が見えるか、その方向ではどう見えるのか、見え方を想定して設計するのです」(中田)
タワーザ上町台コーナーサッシが夜景を室内に取り込みます。
青山ザ・タワー窓から東京タワーが。
美しい眺望づくりは、風景の中で「何を生かす」のかを考えることから始まります。山の稜線や海岸線、公園の木々などの自然に加え、その土地のランドマークとして愛されている建物などがあります。
「大阪市内の『グランドメゾン大手前タワー』は、高層階のお部屋から大阪城が見渡せる絶好の立地です。この場所にふさわしい最高のタワーマンションを追求しました」(迫田)
「まず、北東と南東、東向きの居室からの眺望は大阪城をメインにしました。南西からは大阪湾に沈む夕日が魅力です」(中田)
「でも、眺望だけに頼った物件ではありません。低層階にも共用部などを充実させて、マンション自体のクォリティを高めています」(迫田)
日本には、庭の外の自然を庭の背景として取り込む「借景」という手法があります。
「庭には、通る庭、使う庭、眺める庭という3つの役割があり、アプローチ等の前庭が『通る庭』、ガーデニングをする庭が『使う庭』だとすれば、眺望は『眺める庭』なのです。眼下に大阪城公園が見えれば、そこがすべて自分の庭のように感じられるのではないでしょうか」(木川)
「一方で、眺望は高層階だけのものではありません。低層階でも、敷地の中に再現した庭園の眺望を楽しめます。都市の中で四季を感じる場所が『庭』なのです」(中田)
見たくないものは隠し、見せたいものを際立たせ、室内から遠くの風景までを連続させることで、「風景」を「眺望」に変えてしまいます。
「窓の飾り棚やバルコニーも室内からの眺望に重要な役割を果たします。自分だけの眺望として、景色を上手に部屋の中に取り込むには、窓の周辺も重要です」(木川)
「『グランドメゾン上町台』では、前の公園に向けてリビングテラスを配置し、室内から公園への視界を連続的に感じる空間をつくりました」(迫田)
グランドメゾン赤坂門大濠公園を眺望する贅沢。
グランドメゾン晴明丘名庭園も住居者の眺望になる。
「眺望を感動に変える演出もあります。『大手前タワー』の高層階では、リビングの大きな窓の中央に大阪城の天守閣、その周りを木々の緑が縁取るように設計し、さらにリビングのドアを開けた瞬間、その景色が目に飛び込むように、窓をドアの正面に配しています」(中田)
「床までのガラス窓にすれば、ソファに座ったまま眼下にひろがる景色を一望することができます。逆に、空を眺望にするために、天井まで約5メートルを全面窓にして、空を部屋に取り込んだこともあります」(木川)
眺望が重要なのはリビングだけではありません。
「大きく窓をとったバスルームから夕焼けを楽しんだり、明るい朝日の中での洗顔も気持ちよさそうです。眺望が、暮らしのリズムに勢いを与えることもあるのです」(中田)
「エントランスなどの共用空間にも美しい眺望を取り込むことで、お部屋を訪ねてこられた方々と、眺望による感動を共有できますね」(迫田)
西宮マリナパークシティ/港のまちハーバーヴィラ
(左)リビングからバルコニー越しに見る景色を意識して、バルコニーの手すりもデザイン。
(右)バスルームの窓を浴槽ギリギリまでとって、換気用には別の窓を設けた。
「美しい眺望に四季が加わることで、一年を通して楽しめるという声をいただいています」(迫田)
「海や空も、季節はもちろん、時刻によっても刻々と色を変えるので、飽きることがないとうかがいました」(木川)
「よい眺望とは、目で楽しむだけではなく、緑の匂いや風の音、鳥のさえずりなどを感じる、五感に訴えるものだと思います。これをデザインに生かしてこそ、借景などで自然を巧みに取り入れて眺望としてきた日本人の心に響くのだと思います」(中田)
アイランドシティ「照葉のまち」 テラスと植栽が連続するかのような設えで四季を感じる
※ ここに掲載の情報は2007年時点の情報に基づいています。