「らしさ」。
グランドメゾンに、新しい個性を吹き込み、住まう人の「私らしさ」に応えていく。
有限会社畑萬陶荘 代表取締役社長 経済産業大臣認定 伊万里・有田焼 伝統工芸士
畑石 眞嗣
積水ハウス株式会社福岡マンション事業部
営業二課 店長 宅地建物取引責任者 浜口 孝一
設計課 主任 一級建築士 澤井 孝雄
設計企画課長 一級建築士 佐古田 智哉
(2008年現在)
玄関ポーチには表札にもなる陶板照明をアクセントに。
大人の隠れ家をイメージし、素材にこだわったインテリア。
金具とのサイズ合わせに苦労したレバーハンドル。
建築物の規格化が進むなか、機能的ではあるが、全国で同じようなマンションが増えてきている。
住まう人の「私らしさ」、個性やライフスタイルを、もっと尊重したマンションは作ることができないか。
『グランドメゾン大濠ORGA(オーガ)』は、そんな疑問から生まれたプロジェクト。
地域を代表する伝統産業に着目し取り入れ、住まう人から高い評価を得た。
均一化からの脱却という発想が『グランドメゾン』の価値をさらに高めていく。
「2005年、私たちは『グランドメゾン大濠ORGA』で、本物感、素材感、そして『九州らしさ=アイデンティティー』に徹底してこだわりました。そのとき出会ったのが伊万里鍋島焼です。」(澤井)
有田焼・伊万里焼には、大きく分けると3つの様式があります。赤絵と余白の白の美しさで知られる「柿右衛門」、金を施し豪華絢爛な「古伊万里」、そして大川内山の「鍋島」。
大川内山の地は、将軍家への献上品を作ることが目的で鍋島藩の藩窯が置かれていました。伊万里鍋島焼は、藩窯として、精緻、精巧、完璧を追求し、日本最高峰の磁器とも言われています。図柄がより写実的なのが特徴。また、下絵から何度も重ね塗りを繰り返す、高度で手間のかかる技法により、グラデーションや立体感を表現しています。現在もその伝統を継承しながら、新しい技術や商品の開発・提案を積極的に行なっています。
「求めていたのは、本物であること、九州にゆかりのあるものであること、そして規格化された工業製品ではないものでした。だから伊万里鍋島焼を見たときに、直感的にこれだと感じました。これをグランドメゾンに取り入れることができれば、今までとは違う『大人らしい個性』を創造するライフスタイルが提案できると確信しました。」(佐古田)
絵柄は花をモチーフに(写真は収納扉のつまみ)。
ひとつひとつ手間をかけて作られていく伊万里鍋島焼。
『グランドメゾン大濠ORGA』は、大濠公園に近い閑静な住宅街に計画された1フロア2戸、計11戸の小規模なマンション。自らのライフスタイルを確立されたお客様に、「大人の隠れ家」的「誇りと永住の自邸」を提供しようと建築されました。「隠れ家」というコンセプトから、インテリアには日本伝統の素材を重視して採用。その中核を担うのが、九州の伝統を受け継ぐ伊万里鍋島焼とのコラボレートです。
今回、快くコラボレートに応じていただいたのは、佐賀県伊万里市大川内山の窯元「畑萬陶苑」。
玄関にも陶板照明を採用。
伊万里鍋島焼が持つ本物感やあたたかさに合わせ、フローリングは突板、建具は突板バレン仕上げにするなど、素材を激選。
「販売する立場としても初めての取り組みで、お客様に良さをきっちりとお伝えすることができるのか不安がありました。しかし販売センターに伊万里鍋島焼が届いたときに不安は解消しました。いいモノは見れば分かる。感動する。実際、お客様もいいモノを感じていただける。モノを通じて作り手の情熱が伝わってゆくのがわかりました。私たちも、このプロジェクトを通じてたくさんの刺激を受け、後々のプロジェクトにも繋がっています。」(浜口)
「買っていただいたお客様は、もともと陶器に興味があったり、趣味にされていたりという方ももちろんいらっしゃったんですが、そうでない方もいらっしゃいました。でも、ご入居後、お客様のお宅へ伺ったら、畑石さんのギャラリーで見た伊万里鍋島焼の壺が置かれていたんです。お話を聞くと、インテリアに使われている陶器が気に入り、わざわざ畑石さんのところへ買いに行かれたとのこと。私たちが提案したコンセプトが受け入れられ、お客様のライフスタイルに影響を与えていたんです。とても感動し、嬉しかったですね。」(澤井)
名入れをすれば表札にもなる陶板照明
「最近のマンションはデザインも機能も、とても洗練されてきており、『グランドメゾン』も全国でデザインコードや品質基準をある程度統一することにより、高品質なマンションを市場に供給しています。でも、このようにグローバル化された結果、一方でデメリットも生まれていると思うんですよね。」(佐古田)
「私たちは、『住宅集合』という思想を持っています。集合住宅ではないマンション。住まう方のライフスタイルを尊重し、『私らしい』マンション作りを進めてきました。ですから、規格の均一化が過度に進みすぎると方向を見失ってしまいます。」(浜口)
「『グランドメゾン大濠ORGA』は、私たちの進む方向が再確認できたプロジェクトでした。ニーズの開拓というテーマから生まれたキーワードが『アイデンティティー』。例えば東京のマンションをそのまま福岡に持ってきても、デザインや機能に不都合はない。でも、それでいいのかと自問した結果、出て来たキーワードです。」(澤井)
「ひとつひとつに作り手の魂がこもった日本古来の伝統産業。その心を取り入れてひとつひとつ丁寧に、情熱を込めてマンションをデザインし、個性あるライフスタイルを提案していくことは、『高品質』から、さらに次のレベルへ飛躍するための有効な方法だと思います。」(佐古田)
「私たちは伝統を守る一方で、新しい技術や商品を提案していかなければなりません。お客様を飽きさせないために。満足していただくために。そして五十年後、百年後も価値が認められるものを作っていく使命があります。」(畑石社長)
「らしさ」の追求から伝統産業を取り入れ、均一化からの脱却を目指したグランドメゾン。そして新しいものを取り入れ、価値を高めていこうとしている伊万里鍋島焼。
ブランド・アイデンティティー(ブランドの個性)を作り出し、価値を高めていこうという共通の認識が、福岡の地でコラボレートを成功させました。
お客様に個性ある住まい、ライフスタイルにあった「私らしい」住まいを提案し提供し続ける。それが、積水ハウス「グランドメゾン」のテーマです。
落ち着いた風格を醸し出すグランドメゾン大濠ORGA。
※ ここに掲載の情報は2008年時点の情報に基づいています。