2024/12/13
2024年10月27日(日)、大阪中之島美術館ホールにて初めて「積水ハウスのモンテッソーリな家づくり」をテーマにしたイベントが行われました。当サイトの監修を務めているモンテッソーリ教師あきえ先生と、同じく監修の積水ハウス・フェロー河﨑由美子が、子どもの育ちをサポートする「14のシカケ」の一部をご紹介しながら、子どもの生きる力を育む環境づくりについて解説しました。
01 モンテッソーリ教育と親和性が高い、積水ハウスの「子育ち」の住まいとは?
積水ハウスが考える「子育ち」=「子どもの生きる力を育む家」の概念が、モンテッソーリ教育の考え方とピッタリ合っていたことから、「モンテッソーリな家づくり」が生まれました。イベントでご紹介した「子育ち」の考え方、そしてモンテッソーリ教育の基礎知識は当サイトの以下のページよりご覧いただけます。
また、イベントでお伝えした「モンテッソーリな家づくり」にとって大切な14のシカケのすべては、こちらからどうぞ。
〈子どものイドコロ、子どものココロ モンテッソーリな家づくりの14のシカケ〉
イベント当日は、子どもたちを遊ばせながら参加できるように、会場中央部に子どもたちのキッズスペースを設置しました。この配置は、「子育ち」の空間づくりのポイントでもあります。周りの椅子で子どもたちのスペースを囲うようにして、そこにマットを敷くことで、子どもたちはその囲われた空間に居心地の良さを感じ、安心して遊ぶことができます。イベント中、おもちゃで遊んだり、お絵描きしたりと、どの子も黙々と自分の好きなことに取り組んでいました。
参加者からは「こんなふうに子どもを遊ばせながら一緒に参加できるイベントはなかなかないので、とてもありがたいです」といったお声もあり、親子それぞれの目的を楽しんでいらっしゃいました。
イベントの後半ではQ&Aコーナーも設け、子育て世帯のリアルなお悩みをお2人にお答えいただきました。
子育てと空間づくりのお悩みQ&A
Q1:リビングとダイニングが別フロアにあるとき、赤ちゃんとの過ごし方はどうしたらいいですか?
リビングとダイニングが別のフロアにある戸建てに住んでいるという30代のご夫婦。基本はご飯を食べるときにダイニングへ行きますが、リビングにいる時間の方が長く、リビングでご飯を食べる日もあるとのこと。
そんなお2人から、生後5か月のお子さんとこれから過ごす上で「別のフロアにあるときのおうちでのモンテッソーリの取り入れ方や空間づくりを教えてほしい」という質問でした。
河﨑由美子
家を購入されたときに、「リビングはくつろぐ空間、ご飯はダイニングで」とパンフレットの説明には書いてあったかもしれませんが、リビングのような家族が一番集まるところでご飯を食べてもまったく問題ありません。家族が一番集まるところに一緒にしたい行動をするのが空間の利用の仕方としては正解。特にお子さんが小さいころには、ひとつの空間でできるだけ一緒に生活する方が大切ですよ。
あきえ先生
生後5ヶ月ですと、これから離乳食が始まる時期だと思いますが、お子さんが安心してご飯が食べられそうな空間であることを優先して生活の場所を整えていくことをオススメします。毎日のルーティンの中で、ここに来たらご飯が食べられるんだなと学ぶことで、お子さんの安心につながっていきます。
Q2:子どもの成長に合わせてタイムリーに環境を変えるための秘訣を教えてください。
この日は4歳のお子さんの希望で家族そろってボーダーシャツを着てきたという30代と40代のご夫婦からは、子どもの成長に合わせて空間をつくり替えたいけれど、忙しくて日々成長していく息子さんの変化に追いつけないというお悩み。「タイムリーに環境を整えるために工夫していること、住まいをうまく整えていくためにお家でできることを教えてください」。
あきえ先生
忙しくて“気づいたら子どもが成長していた!”ということは私もよくあるので、お気持ちはとてもわかります。でも、もしお子さんが困っていたら最優先に取り組むことが大切です。たとえば、本当はできるのに環境ができなくさせていることで不機嫌になったり自信をなくしていたり、という姿が見られたときは、環境が合わなくなってミスマッチが起きているサイン。それに気づいたときにはいつかやろうではもう間に合わないので、私は強い意志を持って、この日に絶対やろう!と決めてやっています。
河﨑由美子
今4歳でしたら、まだ届かない場所がたくさんあると思いますが、その都度家のレイアウトを変えるのは大変なので、持ち運びできるステップなどのアイデアグッズもどんどん活用すると良いと思います。例えば、キッチンの調理台などは、お子さんがお手伝いしやすい高さを意識するといいですね。家を建てる時には、お子さまの成長に合わせて”自分でできる”環境に工夫しやすいように家族みんなが使いやすい高さに調整しておくのがオススメです。
Q3:2歳の娘がわんぱく過ぎて対応に困っていますが、どうかかわるのが良いでしょうか?
とても元気いっぱいの2歳の娘さんと来場してくれた40代のご夫婦。好奇心旺盛で体を動かすことが好きなのは良いことと思いつつも、元気すぎて困ってしまうこともあるそうです。「こういう場所に来たときにもじっとしていなくて走り回るので、どう対応したら良いか悩みます。広い場所が好きなので、家の中の空間づくりのアドバイスもお願いします」。
あきえ先生
2歳でしたら今は運動の敏感期なので、動きたくて仕方なくて自然です。ある程度「そういう時期」と大人が許容してあげることがまず大切です。たとえば、今日みたいな会場であれば動き回っていてもまったく問題ないですし、他人に危害を加えているなどではないなら、お子さんが心地よく過ごせていれば大丈夫。TPOに合わせるべきときは、事前のアナウンスが大事です。今からこういうところに行ってこういうことをするから、こういうふうに過ごそうねと具体的に伝える。すぐにはできなくても毎回具体的にやってほしい行動を伝えることで徐々に分かるようになってきます。
河﨑由美子
私の子どもも小さいとき、走り回っていなくなってよく探し回った思い出があります(笑)。あきえ先生がおっしゃるように、敏感期って子どもの発達の中で必ずあるんですよ。でも、ずっと続くわけじゃない。もし家の中でも走り回るなら、その時期だけでも、なるべく家具や物を置かないようなシンプルな暮らしをすることもオススメです。今はデザインやインテリアにこだわらず、子どもが安全に走り回れる空間をつくることを優先していただけたらと思います。
02 最後にお2人からメッセージ!やりがちだけど、やってはいけない親の行動とは?
「子どもが描いた絵を親が飾っていませんか?」
河﨑由美子
子どもが描いた絵を親が飾るのは NGです。子どもが飾るのならOK。子どもが飾る場所を考えることは家とのかかわりをもつ第一歩になります。小さいうちから家とかかわりをもっていると、片付けの力にもつながることが研究でもわかっています。自分の個性や存在を家の中に表出することで、空間をキレイにすることにも関心がいくようになるんです。
自分で飾ると子どもは自分の目の高さに貼ります。大人からするとすごく低い位置でおしゃれじゃなかったりしますが、キレイに飾ってなくてもいいし、斜めでもいいので、親は気になってもそれを直さずに「上手に描けたね。何の絵かな」と興味を持って聞いてあげてくださいね。
あきえ先生
モンテッソーリ教育でも、子どもが描いた絵を親が飾ることはしないですね。子どもが作品として飾るために描いたわけではないなら、飾りたいという大人の気持ちが最大の目的になってしまっているからです。本当にその子が求めているかどうか、その子の行動はどこに目的が置かれているのかを観察して、私たち大人が勝手に目的を決めないことがすごく大事なポイントです。河﨑さんがおっしゃったように、子ども自身が飾りたいなら、斜めだったり逆になっていたりするかもしれないけど、本人が好きなように貼るのが良いですよね。
あと、時計に合わせた行動を学ぶ時期は、時計が子どもの目の高さに合っていて時間が分かりやすいかどうか確認してみてください。実際にお子さんの隣で立ち膝をしてお家の中を歩いてみるのがオススメです。子ども目線の空間を知ると、他にもいろんな発見がありますよ。