知っておくべき、14のシカケ

Case1:
大阪府T邸
夫・妻・長女(4歳)の3人暮らし

01 子どもが安心して過ごせる、小上がりの“居場所”

今回は、実際にモンテッソーリ教育を学ばれた奥様の想いを取り入れて家づくりをされたというTさんご夫妻のお宅に伺いました。

奥様は元幼稚園教諭で、以前勤めていた幼稚園でモンテッソーリ教育を取り入れたことがきっかけで、モンテッソーリ教育を学んだそうです。そして、その考え方にとても共感し、家づくりにおいても子どもの居場所づくりや子どもの自主性を育める環境づくりを心がけたと言います。

「園でモンテッソーリ教育を始めて一番驚いたことは、以前よりもみんなが集中して部屋の中がシーンとする時間が生まれたことです。モンテッソーリ教育では1日1つのことを全員が一緒にやるのではなく、いくつかの作業の中から、それぞれが好きなことを好きなときに取り組みます。そのため、各自が本当に好きなことに集中できるんです」

そんなふうに娘さんにも好きなことをじっくり楽しんでもらえるように、リビングの隅に小上がりのキッズスペースを作りました。「子どもも一緒に1階で過ごすことが多い時期なので、リビングに子どもの居場所を作りたかった」というTさんご夫妻。リビングの一角でありながら、1段上がっていることで空間が区切られ、子どもにとって“自分だけの場所”と感じられる居場所が生まれました。

「ここなら、大人の気配を感じながら安心して過ごせるようで、ひとりで集中して黙々と遊んでいます。おもちゃは種類ごとに分けて物の住所を決めることで、使いたいときにすぐに出せてひとりで片付けられるようにしています」

種類ごとに分けられ、中が見えやすいおもちゃ収納。片付けるべき場所が分かりやすいので、子どもが自ら片付けをしてくれるようになったそう

実はこのキッズスペースは、2階へ続く階段手前の小スペースを活用し、階段の2段目を大きく取ったスキップフロア。この奥に階段が続いています。

おもちゃで遊ぶ時期が過ぎても、子どもの成長に合わせて、机を置いて学習スペースにしたり、大人のちょっとした作業スペースや趣味のスペースに変えたりと、家族の生活の変化に合わせてさまざまな使い方ができます。

最近は、時間に合わせて行動することを覚え始めているという娘さん。子どもの目線の高さに合わせて時計を置いたのも、モンテッソーリ教育から学んだこと。大人目線ではなく、子どもがやりやすいか、見やすいか、と言う視点を持って家の中の環境を整えていくことが自立を促してくれるのです。

モンテッソーリな家づくりのポイント

02 お手伝いしやすいキッチンで、親子の豊かな時間

この家に引っ越してから、親子で料理をすることが増え、よく一緒にホットケーキを作るようになったそうです。

「キッチンが広くなったので、2人並んでもゆったりと作業することができ、おしゃべりしながら一緒に作ったごはんを家族で食べる時間はとっても楽しい時間となっています」

娘さんはキッチンの隅に置いてある自分の踏み台をサッと出して、台にのぼって丁寧に手を洗います。そして、自分ひとりで卵を上手に割って、ボウルに牛乳を注ぎ、かき混ぜます。包丁も使いこなし、ホットケーキに乗せるバナナも自分で切ります。

モンテッソーリ教育では「本物の体験」を大切にしていますが、Tさんのお宅でも娘さんが使いやすい子どもサイズの調理器具を用意して、できることからお手伝いしてもらっているそうです。

「娘はキッチンのだいたいどこに何をしまってあるかもう全部知っていますね。あれ持ってきて!と言ったらすぐに持ってきてくれます」

モンテッソーリな家づくりのポイント