知っておくべき、14のシカケ

03 家族が自由に、ゆるやかなつながりをもてる居場所

リビングというと、設計している時点でまずソファやローテーブル、テレビを置くことを想定してしまうかもしれませんが、使い方はもっと自由であってほしいなといつも思います。

お宅訪問をさせていただくと「すみません、うちはダイニングではなくリビングでご飯を食べています」と申し訳なさそうにおっしゃる方がいらっしゃるのですが、まったくおかしくありません。

小さいときの子どもの安全性を考えるとテーブルや家具はなくていい、場合によっては三輪車の練習ができるぐらいの広いスペースを取って、リビングで赤ちゃんのお世話をしたり、お昼寝をする空間をつくったり、大人でもごろっと転がっても良い場所です。

自由にゆるやかなつながりをもてる広い居場所が家族の関係性には必要だと知っていただきたくて、積水ハウスではLDKをひとつの家族の空間として「ファミリースイート」という名前をつけています。

暮らし方は、子どもの成長によってもどんどん変化していくものだと思うので、子どもの発達や家族のかたちに合わせて自由に工夫して使ってもらえると嬉しいです。

モンテッソーリ教師
あきえ先生

家族みんなが心地良く、みんなで一緒に過ごせる広い空間は、親子の関係性にも良い影響を与えます。モンテッソーリ教育でも環境づくりをとても大切にしていますが、子どもは安心できる場所にいると、環境との相互作用でいろんな姿を見せてくれます。安心感は探索心や探究心につながって、その結果、知る喜びが増えてまたもっと知りたくなる。いい環境は子どもの原体験のきっかけとなり、自分で生きる力を身につけることにつながっていきます。

04 大人と子どもの目線が合う段差のひみつ

バリアフリーという言葉が浸透しはじめ、さまざまな場所でフルフラットな空間が求められていた2007年頃、私たちはフロアが一段下がった「くぼみ空間」のあるリビングの提案を始めました。
このくぼみのある「ピットリビング」は、子どもの発達心理を研究する中で、遊び続けてもいいエリアを決めて遊ぶこと、複数の視点をもって物や事象を観察することなど、子どもにとってすごく大切だと考えたのがきっかけです。

段差によって、間仕切りがなくてもリビングの中が別の空間になります。段差はベンチや机、収納として使うことができます。一段下がっているというだけで子どもたちはそこに座り、自然と遊びだし、大人たちも集まってくる不思議な場所です。

そして、段差があることで大人と子どもの目線は合いやすくなり、そこからコミュニケーションが生まれます。また、ひとつの場所で目線の高さが変わることで見える景色が変わって子どもたちの想像力と創造力のスイッチが入ります。

実は、段差ではなくても、ラグやカーペットを敷くだけでも空間が変わって子どもの居場所をつくることはできます。大切なのは安心できる居場所があること。大人や子ども、場所が変わっても、家族みんなが居場所だと思える空間があって、そこで「一緒にいる」ということが安心であり、絆になっていくと思います。

特に、言葉でのコミュニケーションがまだまだ上手にできない乳幼児期の子どもにとって、自由に集中して遊びながらも、同じリビング空間にいて家族の視線の中に居られることは、大きな安心につながると思っています。

モンテッソーリ教師
あきえ先生

生まれたときから安心感があることはとても重要ですね。それから、モンテッソーリ教育では、大人と子どもが対等な立場で「同じ秩序」を整えることも大切にしています。「ピットリビング」のように大人と子どもが物理的に同じ目線になれる高さ、家族で過ごすリビングの中に、子どもが自分の場所だと思えるような居場所があると、子どもがひとりの人間として尊重されていると感じながら成長する手助けにもなります。
▶こちらの記事で詳しくお話ししています。
赤ちゃんも大人も安心できる環境づくり

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