2024/12/13
知っておくべき14のシカケ
河﨑由美子
子どもは身体が小さく、力が弱く、わからないことが多いので、家庭内事故を防ぐために、まずは子どもの身体や行動の特性を知ることが大切です。そしてきちんと危険を防ぎ、子どもがのびのびと過ごせる環境を整えましょう。
INDEX
01 できないをできるに変える体験の場
子どもにとって安心・安全な住まいとはどんな場所なのでしょうか。1960年の創業当初からずっと取り組んできた「障がい者・高齢者のための住まいの安全・安心」の研究を発展させ、子どもの安全・安心についても研究を重ねてきました。子どもが高齢者と違うのは、心身ともに成長していく段階であるということ。
子どもは身体が小さく、力が弱く、わからないことが多いもの。つねに危険と隣り合わせですが、大ケガにつながる事故を防ぎながら“自分でできる”を促す仕組みをつくることが大切だと思います。危ないをできるだけ小さくしながら、住まいが「危険予知や危険回避の学びの場」となることが理想だと思います。
子どもにとって、日々の暮らしは学びです。安全性を整える中で、危険を排除しすぎないことは子どもの成長にとって大事なことです。たとえば、段差をすべてなくしたら、段差が危ないという意識を持つことができないですよね。
あきえ先生
モンテッソーリ教育では、子どもは環境からあらゆることを吸収し、自らを発達させていく力をもっていると考えられています。さまざまなスキルを獲得するために、「自分でやりたい」というエネルギーで溢れているため、大人は子どもの「今やりたい」「ひとりでできる」が叶えられる環境を用意してあげましょう。
02 家の中では過保護にしすぎないないことも大切
近年SNSなどによる情報拡散力の影響で、子どもの家庭内事故にまつわるさまざまなニュースが届くようになりました。そのおかげで親たちの安全に対する意識が高まっているのは良いことなのですが、一方で必要以上の行動制限もみられるようになっているとも思います。
外にはもっと危険な場所がたくさんありますから、家の中では“大きいケガは避け、小さいケガは許容する”気持ちで、子どもたちが日常生活の中でちょっとした危険を知り、体験できる環境をつくっていくことが、住まいの役割だと考えています。
よく小さなお子様のいる方から、ベビーゲートやサークルはつけるべきか、と聞かれます。親が外出の準備や料理などで集中するときは、子どもから目を離すことのできるゲートやサークルはとても助かるものですが、そこに子どもを隔離したまま放置してしまうことは好ましくありません。
転落や溺水、誤飲など、子どもの大きなケガや事故につながらないよう、先回りして家の中を点検することは大事です。
あきえ先生
モンテッソーリ教育の視点で意識したいのは、制限と自由の境界線です。危険だからと必要以上に子どもを守ろうとすることが子どもの経験値を下げたり、自立の妨げになったりすることも。たとえば、ベビーサークルで子どもを囲うのではなく、環境を囲えば、より広い空間を子どもは自由に探索することができます。具体的には、キッチンや階段の入口にゲートをするというように。制限がある中での自由を確保すると、より自由が際立って、子どもは安心安全の中で探求していくことができます。
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