知っておくべき、14のシカケ

子どものココロ

05

知っておくべき14のシカケ

モンテッソーリ教師
あきえ先生

叱るのではなく“伝える”。このコツが掴めるようになると、子どもは“尊重された”という経験から、
自己肯定感をどんどん積み上げていきます。

01 「わがまま」と「こだわり」の線引きって?

3歳くらいまでの子どもは、とても自己中心的でわがままだと思ってしまいがちですが、これは性格ではなく発達段階の大切な特徴です。では、子どもの要望はどこまで受け入れるべきなのでしょうか。なるべく受け入れてあげたい“こだわり”なのか、受け入れられないと伝えるべき“わがまま”なのか、線引きに迷うことがありますが、まず意識したいことは「発達のためのエネルギーなのか」どうかということです。子どもは自分を発達させていく力をもっています。そのため、繰り返し階段を登りたがったり、ずっとお話をしていたり、何枚もティッシュを出してみたり、大人が理解できない行動をすることもあります。そのため、悩んだときには、まず「この要望は発達のためなのかな?」と少し考えてみるのがおすすめです。
しかし、実際の対応では発達のためなのか、すぐにはわからないこともあるでしょう。このようなときは次の2つのポイントを意識してみてください。

ひとつは、本人が感覚的に苦しさを感じていないか。たとえば「帽子を被りたくない」と言っている場合、頭が締め付けられたり、視界が遮られたりする感覚を苦しく感じていないでしょうか。子どもは「イヤだ」の理由をうまく伝えられないため、大人から見るとわがままだと捉えてしまいがちですが、心地悪いと感じていることが強要されない環境であることはとても大切。子どもをよく観察して対話することを心がけましょう。

もうひとつは、個人のことなのか、コミュニティにかかわることなのか。たとえば子どもが毎日同じ服しか着たがらない場合、基本的には個人のことなので大人の工夫で受け入れることができます。ただ、準備された夕食の席で「今日はこれはイヤ。他の物が食べたい」と言われても、急に対応するのは難しいことです。コミュニティが関わるシーンでは、必ずしも要望が受け入れられるわけではないということを伝えるのは、社会性を身につける上で大切な経験となります。ただし、コミュニティにかかわることであっても感覚的に苦しさを感じている問題が絡んでいる場合は、個別の対応が必要です。

02 「叱る」のではなく「伝える」

子どもの要望や行動が受け入れられないとき、大人はどう関わるべきでしょうか。つい「ダメ!」「やめないと怒るよ」などと叱ってしまいがちですが、子どももひとりの対等な人間としてかかわるモンテッソーリ教育では、叱ることは必要ないと考えられています。“叱る”というのは威圧的で、親子のあいだに上下関係があることが前提の行為だからです。でも、叱らない=甘やかす、ということではありません。

子どもを尊重しながらやって良いこと、良くないことの線引きを示していくためには、叱るのではなく“伝える”ことが大切です。たとえば散らかしっぱなしの子どもに対し、「片付けなさい!」と叱るのではなく「散らかっていると危ないしスッキリしないから、片付けよう」となどと伝えてみましょう。叱ると子どもは反射的にこちらの言うことを聞きがちですが、それだと「叱られて怖いから片付けた」だけで、なぜ片付けるべきかは理解しておらず、根本解決になりません。

“伝える”のは繰り返しの根気が必要になりますが、やって良いこと、良くないことの線引きを一貫して伝え続けていくことで、いずれ子どもの行動に変化が見られ、尊重された経験は自己肯定感につながっていきます。