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2019.06.03vol.3 賃貸併用住宅の間取りとプラン解説!
失敗しないポイントとは?

近年、注目を集める賃貸併用住宅。特に、駅に近い場所や人気のエリアなどに住まいを建てる場合の選択肢の一つとして検討されている方も多いようです。

賃貸併用住宅は自宅の一部を賃貸住宅として運用するため、家賃収入により建築費のローン負担が軽減可能なことや、固定資産税・相続税などの税制上のメリットもあります。一方で、安定した家賃収入を得るためには、まず入居者に「ここに住みたい」と思ってもらうことが大切であり、それがいかに空室をつくらないかということにつながっていきます。また、自宅の一部を人に貸すわけですから、当然のことながらそれぞれのプライバシーへの配慮も求められます。

そこで今回は、入居者が住みたいと思え、しかもオーナーも安心して貸すことができる賃貸併用住宅とはどのようなものなのか、外観やデザイン、設計のポイント、間取りの考え方などを、解説していきたいと思います。

目次

1. 賃貸併用住宅の外観・デザイン・設計のポイント

1-1. 入居者に満足感を与えるような外観・デザインにする

賃貸併用住宅と聞くと皆さんはどんな住まいを思い浮かべますか。賃貸併用住宅は、まず自宅という側面を持っており、外観やデザインなどにオーナーの意向が大きく反映されます。

一方で、賃貸併用住宅は人に貸すという側面を持っています。その場合、入居者はまず外から住まいを見ることになるため、当然、外観やデザインは大きなポイントになります。実際に、国土交通省住宅局の「平成30年度住宅市場動向調査」では、民間賃貸住宅入居世帯で平成29年度中(平成29年4月~平成30年3月)に住み替えを行なった人の「住宅の選択理由」として立地・家賃についで「住宅のデザイン・広さ・設備等が良かったから」という回答が挙げられています。

■ 住宅の選択理由(複数回答)

出典:「平成30年度住宅市場動向調査」(国土交通省住宅局)資料をもとに作成

さらに、住宅の選択理由となった設備等として「住宅のデザインが気に入ったから」という回答が、過去5年間で増えてきています。

■ 住宅のデザインが気に入ったから

出典:「平成30年度住宅市場動向調査」(国土交通省住宅局)資料をもとに作成

具体的にどのような住宅デザインが好まれるのか、ということは個人的な趣味嗜好とも関わっているため、限定することはできません。ただ、冒頭に書いたように、賃貸併用住宅の場合、オーナーの自宅として外観やデザインには、多かれ少なかれオーナーの意向が反映されます。

そこで、ポイントになるのは、入居者の視点です。入居者の住宅選択理由の一つとして住宅のデザインがかなりのウェイトを占めるようになってきているということは、おわかりいただけたと思います。そして、どのようなデザインが好まれるのかは、個人的な嗜好と深く関わっていることもご理解いただけると思います。

この2つの点を考え合わせると、住宅のデザインはどのような入居者を募集するかということにも影響を与えるということになります。あなたがオーナーになるとして、どんな入居者像をイメージされているでしょうか。

現在、賃貸マンションをはじめとする賃貸住宅は、その外観やデザインも含めて、高級感や上質感を感じさせる物件が増えてきています。入居者にとっても、そこに住むことがステイタスや、満足感につながるような住まいであることは魅力の一つと言えるのではないでしょうか。

1-2. お互いのプライバシーに配慮する

賃貸併用住宅では入居者同士だけでなく、オーナーと入居者のプライバシーが相互に守られることが大切です。

まず、生活音のトラブルについて気になる方も多いのではないでしょうか。このような問題への対応策としては、上下階の住戸や隣り合う住戸の遮音対策を検討する必要があるでしょう。

また、遮音対策をしていない床構造の場合は、音が出やすいリビングの直下には、賃貸住戸の寝室や居室を置かないなどの工夫も必要になるでしょう。

次に、エントランス部分も大切なポイントです。【図1】のようにオーナーの自宅と賃貸部分を分離した状態でエントランスを共用しながら、そこから先の動線を分ける方法があります。この場合、オーナーと入居者が挨拶程度は交わすことになります。

また、【図2】のようにオーナーの自宅と賃貸部分を分離するだけでなく、エントランスも完全に分離させることで、普段の生活ではオーナーの家族と入居者は顔を合わせにくい設計にすることもできます。

入居者とまったく顔を合わせないのか、挨拶程度は交わすのかなど入居者との距離感をどう取るのかはオーナーの考え方により様々です。干渉されることを快く思わない人も多いなかで、同じ屋根の下でお互いに心地よく暮らすための知恵として、どちらのエントランスであったとしても、挨拶程度は交わせるような関係づくりが大切なのかもしれません。

1-3. 周辺の賃貸物件にない付加価値を提供する

賃貸併用住宅では外観やデザインなど見た目が重要なことは冒頭でご紹介しました。加えて入居者が気にするのは、設備や仕様です。特に、水廻りの設備については関心が高いことが、国土交通省の「住宅市場動向調査」からも伺えます。

■ 平成30年度 設備等の選択理由(複数回答)

出典:「平成30年度住宅市場動向調査」(国土交通省住宅局)資料をもとに作成

どんな設備や仕様が入居者に人気があるかは、大きなトレンドとして把握していることは大切なのですが、その賃貸併用住宅が建つエリアではどのような人たちが入居者として見込まれ、どんな設備・仕様が好まれるのかを把握できれば、それを基準に採用する設備等を検討・決定することができます。オーナー自らがこうした内容を把握するというのは、なかなか至難の技です。その意味で賃貸住宅を数多く手がけているハウスメーカーであれば、全国的なトレンドだけでなく、各地のエリアに密着した情報も把握しています。

ちなみに、積水ハウスはハウスメーカーとして多くの賃貸住宅を手がけており、グループ会社に賃貸住宅の管理を行う積和不動産(現:積水ハウス不動産)が存在しているため、必要な情報をタイムリーに把握し、実際の賃貸併用住宅の設備・仕様に反映させていくことができます。

1-4. 賃貸併用住宅は3階建て・4階建て住宅がおすすめ

賃貸併用住宅で、ある程度の家賃収入を得ながら、自宅もゆとりを持って設計したいという場合、3階建てや4階建てがおすすめです。

土地を有効に活用しながら住戸数を確保しやすく、自宅部分と賃貸部分を分離するパターンが多様に考えられることや、重厚感あふれる邸宅風の外観から洗練されたマンション的な佇まいなど、オーナーの希望や街並みを意識したデザインにも対応しやすいという点など、3階建て・4階建て住宅には様々なメリットがあります。

実際に、「これが賃貸併用住宅?」と思えるような住まいを実現することで、そのエリアの人気物件として注目を集めている事例もたくさんあります。

1-5. 地域ごとの建物の規制に配慮する

賃貸併用住宅をどこに建てるかによって様々な規制があります。そのため、同じ広さの土地でも建物の構造や高さ、大きさなどはまったく違うものになります。

大部分のエリアは都市計画法によって第一種低層住宅専用地域など13種類の用途地域が定められており、建築基準法令により建てられる建物の種類(住宅、店舗、施設など)や規模(面積、高さなど)が制限されています。具体的には用途地域に合わせた建ぺい率、容積率という形で基準が定められているため、その土地に建てられる建物の建築面積や延床面積が制限されることになります。

この他、まちなかでの日照を確保するために建物の高さに関して規制した「斜線制限」などもあり、建物の形状にも影響が出てくるので事前によく調べておくことが必要です。

さらに、都市計画法によって、市街地における火災の危険を防除するために「防火地域」「準防火地域」が定められており、それぞれに建物の延べ床面積や階数に応じて、「耐火建築物または準耐火建築物」にしなければならないという制限があります。賃貸併用住宅も、これらの適用を受けるため、専門家に依頼することが大切です。また、ハウスメーカーによって建物の構造にも違いがあり、規制に対する対応力にも違いがあるため、その点もしっかりチェックしておきましょう。

2. 賃貸併用住宅の切り分けパターンと間取りの考え方

賃貸併用住宅は自宅と賃貸部分が並存するため、空間をどのような形で切り分けるかがポイントになります。大まかには、建物の上下階で切り分けるパターン、建物を縦割りにして切り分けるパターンがあり、それぞれにメリット・デメリットがあります。

2-1. 上下で切り分ける(横割り)パターン

建物の上下で切り分けて、オーナー住戸と賃貸住戸を配置するパターンです。このパターンには上階にオーナーの自宅を配置し、下の階に賃貸住戸を配置する場合と、上階に賃貸住戸、下にオーナーの自宅を配置する場合があります。

■ オーナーの自宅を上の階に配置する場合

3・4階を居住スペースとする。

4階を居住スペースとする。

3階一部と4階を居住スペースとする。

メリット:
3・4階建てであれば、自宅を上層階に配置することで、オーナーは比較的眺めのいい環境を得ることができます。

デメリット:
下の階への音漏れなどに対する配慮が必要になり、自宅に出入りするために上下の移動と動線の確保が必要になってきます。

■ オーナーの自宅を下の階に配置する場合

1階だけを居住スペースとする。

メリット:
賃貸部分を上の階に配置することで、セキュリティ面で入居者の安心感が得られ、眺めのいい環境を提供できれば、その分高めに家賃設定が可能になります。また、自宅が1階であれば下の階への音漏れを気にすることもありません。さらに庭を設けて楽しむこともでき、既存の庭があればそれを残すことも可能です。1階なので自宅への出入りも容易で、将来的なことも考えてバリアフリーな空間をつくることもできます。

デメリット:
防犯システムの導入など、対策によっても異なりますが、自宅のセキュリティに関する安心感という点では上層階に自宅がある場合よりも劣るかもしれません。また、遮音対策が施されていない床構造の場合、上層階の生活音が気になることも。

2-2. 縦割りで切り分けるパターン

各階を縦割りにして自宅と賃貸住戸を割り当てるパターンです。このパターンでは、自宅の玄関と賃貸部分の共用エントランスを完全に分離することも可能です。

■ オーナーの自宅と賃貸部分を縦割りに配置する場合

縦割りにし、一方を居住スペースとする。

メリット:
オーナーは上下階の音を気にする必要がなく、上層階からの眺望を楽しむことができます。また、上層階の賃貸住戸はセキュリティ面も高まり眺望も良いことから、家賃を高めに設定することができます。

デメリット:
住宅部分と賃貸部分の両方に階段室やエレベーターが必要になり、それだけ面積を取られてしまいます。

「間取りの考え方は理解できたけど、実際の賃貸併用住宅ってどんな感じなんだろう?」という方は、積水ハウスの3階建て・4階建て「実例紹介」をおすすめします。

賃貸併用を含め様々な暮らし方や敷地面積から20邸以上の実例を豊富な写真と間取図、そして、オーナー様が実際にハウスメーカー選びから賃貸併用住宅を建てるまでを簡単にご紹介していますので、参考にしてみてはいかがでしょうか。

2-3. 賃貸住戸の間取りはエリア分析から

「住宅の選択理由」についてのアンケート調査などによると、必ずといっていいほど「広さ」という回答が上位に挙げられます。誰しも広い住戸に憧れはありますが、結局のところ築年数や立地環境が同じなら、広さに応じて家賃も高くなる傾向があります。

また、一口に「広さ」といっても、ひとりで暮らすのか、カップルで暮らすのか、あるいは家族で暮らすのかによっても、求められる広さは異なります。同様に賃貸住戸の間取りも、ワンルームなのか、1LDKあるいは2LDK、3LDKなのかという判断は、その賃貸併用住宅が建つエリアにどんな人たちが住んでいるのか、どんな入居者が想定されるのかということをまず分析・把握することから始まります。

自社で賃貸住宅を建てているだけでなく、グループ内に賃貸住宅を管理している会社があり、エリアの賃貸住宅市場を把握しているハウスメーカーであれば、そのエリアで想定される入居者に合わせた間取りを提案できる情報を持っていることになります。

3. まとめ

賃貸併用住宅は自宅と賃貸住宅が一緒になった住まいです。だからこそオーナーと入居者相互のプライバシーにどう配慮していくのかということにはじまり、自宅スペースと賃貸スペースをどのように切り分けるのかということなど、設計面で個人邸とはかなり異なる配慮や工夫が求められます。

また、賃貸住戸の入居者募集を意識した外観や共用部のしつらえ、設備・仕様、間取りなどを検討していく上で、その賃貸併用住宅が建つエリアの賃貸住宅市場の動向やトレンドを把握しておくことも大切です。賃貸住宅と個人住宅(注文住宅)という2つの視点を持ちながら、デザインや間取りを検討していくことが大切な賃貸併用住宅。オーナーも、入居者も、それぞれに快適で、満足できる家づくりを実現するためには、まず住まいとしての安全・安心・快適を支える基本性能を高いレベルでクリアしていることが重要です。

その上で、土地に合わせて柔軟に対応できる構造を持った住宅であること、そして、これらのポテンシャルを十分に引き出しながらオーナーの思いを実現できる設計力・提案力が大きなポイントになるといえるのではないでしょうか。


積水ハウスの賃貸併用住宅を実際に見てみたいという方は、「お近くの積水ハウス」の「住宅展示場」ページをぜひ利用してみてください。
「空間の特徴」から「店舗・賃貸併用」を選んで、ご覧になりたいエリア、商品、構造にチェックを入れて検索すると、該当する展示場を簡単に見つけることができて便利です。
※ご来場予約・お問い合わせは各展示場のWebサイトから行うことができます。

総合住宅展示場ではさまざまなモデルハウスを見ることができますが、限られた時間の中で効率よく知りたい情報を得るためには下調べや準備も必要です。
でも、どんな準備が必要なのかわからないという方は、積水ハウスの「展示場見学の“秘訣”6つのポイント」の記事を参考にされてはいかがでしょうか。