病院に行くまでもないけれど、なんとなく身体が不調…そんなときはありませんか?人々の健康意識が高まるなか、食材の力で体調を整える「薬膳」が注目を浴びています。
今回は、薬膳の基礎知識と、冬におすすめのレシピをご紹介します。
薬膳とは?
薬膳とは、中医学理論に基づいて食材、中薬と組み合わせた料理で、栄養、効果、色、香り、味、形などすべてが揃った食養生の方法です。
薬膳と聞くと、いわゆる漢方の生薬や薬草など特殊な食材を使った料理を想像しがちですが、いつもの食材を季節や自分の体質に合った組み合わせにすることにより、毎日の生活に取り入れることができます。
薬膳で基本となる考え方に、「陰」と「陽」があります。自然界すべてのものと現象は、陰と陽の関係で成り立っているという考え方で、1日や季節の変化は陰陽の関係によって生まれると考えます。
人間の身体も陰に傾いたり、陽に傾いたりします。食材にも「陰」と「陽」があり、季節によって摂る食材を考えることによって、身体の「陰」と「陽」のバランスを整えてあげることが大切です。
食材と五性
食材には「五性」があります。季節により食材の選択が変わります。夏に熱を冷ます胡瓜(きゅうり)、トマト、西瓜(すいか)、豆腐、冬に身体を温める韮(にら)、南瓜、海老、唐辛子のように涼・寒・温・熱・平の五種類の性質があります。食材の性質を知り、季節の特徴と身体の特徴を併せて食材や中薬を選ぶことが大切です。
出典:こども薬膳.辰巳洋.緑書房.2010
冬の身体の状態と、おすすめレシピ
12月から1月は、最も寒い季節です。私たちの身体の中では、一番陰気が旺盛になり陽気が沈む季節で、身体が冷えます。陽気を補い、臓腑(ぞうふ)を温めて冷えの改善をはかる食材を摂ることで、身体を休ませ栄養分を貯蔵することが大切です。
南瓜と鶏肉の温活スープ
温性で体を温め、寒さを除く乾姜(生姜パウダー)などのスパイス類を使いました。臓腑(ぞうふ)を温め冷えの改善をはかる食材を加えることで、陽の力を高める効果があります。
詳しいレシピはこちら!
南瓜と鶏肉の温活スープ
【素材名】
【立膳】
【材料:2人分】
【作り方】
- ❶鶏肉は一口大に切り、塩麹でもんでおく。
- ❷陳皮は白ワインにつけて戻し、みじん切りにしておく。
- ❸ねぎは薄切り、マッシュルームは4等分にする。
- ❹南瓜は飾り用に皮付きのものを切り、残りは皮を除きひと口大に切る。
- ❺鍋にバター、にんにくを熱し、生姜パウダー、玉ねぎを炒める。鶏肉を加え炒め、南瓜を入れ、陳皮(ちんぴ)の入った白ワインを回しかけてひと炒めする。
- ❻水を加えて蓋をして煮る。煮立てば弱火で10~12分、野菜に火が通るまで煮る。(ここで飾り用の南瓜を取り出しておく)
- ❼混ぜ合わせた(A)を加えて温める。ブレンダーでなめらかに攪拌する。
- ❽塩ゆでしたブロッコリーを加え、味をみて塩で整え、黒胡椒をふる。
- ❾器に盛り、飾り用の南瓜をトッピングし、砕いたクルミを散らす。
【食材の効能】
- 鶏肉…………………
- 補益類 平(温)平/脾、胃
補中益気、補精添髄、降逆止嘔
- 南瓜…………………
- 補益類 温 甘/脾、胃
補気健脾
- ブロッコリー………
- 補益類 平 甘/腎、脾、胃
補脾和胃、補腎健脳強筋
- 陳皮…………………
- 理気類 温 辛苦/脾、肺
理気調中、燥湿化痰
- 乾姜…………………
- 温裏類 熱 辛/心、肺、脾、胃、腎
温中去寒除痺、回陽通脈、温肺化痰、温経止痛
- 玉ねぎ………………
- 理気類 温 辛甘/脾、胃、肺、心
健脾理気、和胃消食
- クルミ………………
- 助陽類 温(熱)甘/腎、肺、大腸
補腎助陽、斂肺定喘、潤腸通便
- 胡椒…………………
- 温裏類 熱 辛/胃、大腸
温中止痛
海老の韮(にら)つくね巻の南瓜添え
中医学の考え方では、冬は「腎」と関係の深い季節です。「腎」の働きを良くするために、海老、韮(にら)などの「温性」のものを摂り、身体を温め、補いいたわりましょう。
詳しいレシピはこちら!
海老の韮(にら)つくね巻の南瓜添え
【素材名】
【立膳】
【材料:2人分】
【作り方】
- ❶海老は尾と一節を残して殻をむき、背ワタを取り除く。
- ❷熱湯でさっと茹でそのまま冷ます。
- ❸韮(にら)、生姜はみじん切りにする。南瓜は一口大に切る。
- ❹鶏ひき肉に酒、砂糖、塩、片栗粉大さじ1を入れて混ぜ、❸の韮(にら)、生姜も入れる。
- ❺❹ を良く混ぜ合せて、つくねにする。
- ❻海老に片栗粉大さじ1をまぶし、❻のつくねを6等分して包む。
- ❼蒸し器で❻と南瓜も入れて10分蒸す。
- ❽好みで辛子醤油をつけて食べる。
【食材の効能】
- 海老……………
- 助陽類 甘・温/肝・腎・脾・肺
補腎壮陽、温陽開胃
- 鶏肉……………
- 補気類 甘・温/脾・胃
補中益気、補精添髄、降気止逆
- 韮………………
- 温裏類 辛・温/肝・胃・腎
温陽解毒、下気散血、食欲増進・疲労回復
- 生姜……………
- 解表類 辛・微温/肺・脾
温肺止咳、温胃止嘔、発汗解表
- 南瓜……………
- 補益類 甘・温/脾・胃
補気健脾
ラムチョップと道産野菜のスープカレー
陽気を補って臓腑(ぞうふ)機能や抗寒能力を高めるラム肉と、冷え症状を改善させて臓腑(ぞうふ)を温める香辛料を組み合わせました。
詳しいレシピはこちら!
ラムチョップと道産野菜のスープカレー
【素材名】
【立膳】
【材料:2人分】
【作り方】
- ❶ラム肉に塩、黒胡椒して、マリネ液に30分以上漬けておく。じゃがいも、にんじん、ピーマンは縦半分の大きさに切る。しめじは、石づきを取り小分けする。玉葱は、みじん切りにする。
- ❷フライパンにサラダ油を入れスパイスを弱火にかけて香りをだす。ピーマンを入れて焼き色がついたら取り出し、みじん切りの玉葱を入れ強火で炒める。
にんにく、生姜、五香粉も加えて玉葱が飴色になるまで炒める。
- ❸熱したフライパンにラム肉を入れて表面に焦げ目がつく程度に焼き、取り出しておく。鍋に1000ccの水を入れ、じゃがいも、にんじんを入れて強火にかけ、沸騰したら弱火にし、さらに20分ほど煮る。野菜が柔らかくなったら、一旦取り出す。
- ❹鍋のスープの中に、炒めた玉葱を加えてよくかき混ぜ、スープが沸騰したらカレー液をダマにならないように溶かし入れる。
- ❺❹の鍋にラム肉、じゃがいも、にんじん、ピーマン、しめじを加え、中火で5分ほど煮たら、最後にバジルを加える。
- ❻スープ皿にラム肉と野菜を形よく盛付け、スープを注いだら出来上がり。
【食材の効能】
- ラム肉……………
- 助陽類 大熱(温) 甘 / 腎、脾、肝、胃
温陽暖下、益気補虚、通乳治帯
- 玉葱………………
- 理気類 温 辛 甘 / 脾、胃、肺、心
健脾理気、和胃消食、発表通陽
- にんじん…………
- 養血類 平(微温) 甘 / 肺、脾、胃
肝養血養肝明目、斂肺止咳、健脾化滞
- ピーマン…………
- 温裏類 熱 辛 / 心 脾
温中散寒、開胃消食
- しめじ……………
- 補気類 涼 甘 / 腎、肺
- じゃがいも………
- 補血、通便補気類 平 甘 / 胃、大腸
補気健脾
【取材協力】
日本国際薬膳師会
「国際薬膳師(士)」および「国際薬膳調理師」の国際資格を有する者、またはそれに相当する資格保有者で構成された団体です。中国に古くから伝わる「薬膳」の理解を深め、広く普及に努めるとともに、薬膳の専門家として、薬膳を通して人々の健康増進に貢献することを目指しています。日本国際薬膳師会は、設立より今年で16年目となり、会員数は473名(2019.10まで)になりました。
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