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こんな手法もある土地有効活用 その4 サービス付き高齢者向け住宅の税制メリットと建設補助金

税理士法人今仲清事務所 税理士 今仲 清

サービス付き高齢者向け住宅とは、入居者に対して安否確認や生活相談サービスの提供が義務付けられたバリアフリー構造の賃貸住宅で、都道府県知事等への登録などにより住宅建設費用の一部補助金の交付が受けられる制度や税制上の優遇措置が設けられています。これらの支援措置により、土地活用手法としても期待されています。
サービス付き高齢者向け住宅に対する建設補助金は、一部要件を見直した上で令和6年度予算においても引き続き手当されており、税制上の優遇措置については、令和5年度税制改正で一部改正の上、延長措置がとられました。

<令和6年度予算措置のポイント>
支援措置 主な改正内容
サービス付き
高齢者向け
住宅整備事業
建設補助金
  1. 更なる災害リスクへの対応の強化
    ・建築基準法第39条第1項に規定する災害危険区域のうち、急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律第3条第1項に規定する急傾斜地崩壊危険区域又は地すべり等防止法第3条第1項に規定する地すべり防止区域と重複する区域におけるサービス付き高齢者向け住宅の新築は、原則として補助対象外とされました。
    ・(ⅰ)かつ(ⅱ)の区域にサービス付き高齢者向け住宅を新築する場合、原則、住宅部分について算定された補助額は半額となり、改修する場合、原則、住宅の取得に要する費用について算定された補助額は半額となります。
    (ⅰ)都市計画法第7条第1項に規定する市街化調整区域
    (ⅱ)土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律第7条第1項の規定に基づく土砂災害警戒区域又は浸水想定区域(水防法第14 条第1項若しくは第2項の規定に基づく洪水浸水想定区域又は同法第14 条の3第1項の規定に基づく高潮浸水想定区域であって浸水想定高さ3m以上の区域)

[1] 登録基準を満たすサービス付き高齢者向け住宅とは

サービス付き高齢者向け住宅としての登録は、60歳以上の方、要介護・要支援認定を受けている単身者及びこれらの方と同居する配偶者などの一定の者を入居者とする各居住部の床面積が原則として25m2以上の賃貸住宅で、一定の資格を有するものが日中常駐して安否確認や生活相談サービスを行っていることや、契約内容についても権利金その他の金銭を授受しないこと等の要件を満たしていなければなりません。
また都道府県知事等への登録は建物ごとに5年ごとの更新制となります。

<サービス付き高齢者向け住宅の登録基準>
1 入居対象者 入居者は、原則として60歳以上の高齢者、要介護・要支援の認定を受けている単身向け及びこれらの方と同居する配偶者、60歳以上の親族、要介護又は要支援認定を受けている親族などがいる場合の家族向けが対象となります。
2 床面積基準や必要な設備
  1. (1)各居住部分の専用床面積が原則として25m2以上であること。※居間、食堂、台所その他の住宅の部分について高齢者が共同して利用するため十分な面積を有している場合には、18m2以上でよいこととされています。
  2. (2)各居住部分に台所・水洗トイレ・収納設備・洗面設備・浴室を備えること。※共用部分に共同して利用するため適切な台所、収納設備又は浴室を備えることにより、各戸に備える場合と同等以上の居住環境が確保される場合は、各戸に台所、収納設備又は浴室を備えなくともよいこととされています。
  3. (3)バリアフリ-構造(段差のない床、手すりの設置、廊下幅の確保等)であること。
3 提供するサ-ビス 安否確認と生活相談のサ-ビスが必須で、ケアの専門家※1が常駐してこれらのサ-ビスを提供する必要があります※2。また、常駐しない時間帯は緊急通報システムによって対応できる必要があります。

※1 ケアの専門家とは、次の人に限ります。

  • 社会福祉法人・医療法人・指定居宅サ-ビス事業所等の職員
  • 医師・看護師・准看護師・介護福祉士・社会福祉士・介護支援専門員
  • 介護職員初任者研修課程修了者

※2 入居者の健康状態、要介護状態等その他の事情を勘案し支障がない場合は、あらかじめ入居者の承諾を得ている場合に限り、ケアの専門家が日中常駐しないことも可能です。

4 契約・前払金
  1. (1)書面(電磁的記録を含む。)による居住専用部分が明示された契約でなければなりません。
  2. (2)賃貸借方式による契約と利用権方式による契約がありますが、いずれの場合も、長期入院などを理由に事業者から一方的に解約できないことになっているなど、居住の安定が図られた契約内容になっていなければなりません。
  3. (3)権利金やその他の金銭を受領できないこととされ、敷金、家賃・サ-ビスの対価のみしか受け取ることができません。
  4. (4)家賃サ-ビスの対価について前払金を受領する場合は、次の要件を満たす必要があります。
    • 前払金の算定基礎、返還債務の金額の算定方法が明示されていること
    • 入居後3か月以内に、契約を解除又は入居者が死亡したことにより契約が終了した場合、「契約解除までの日数x日割り計算した家賃等」を除いて、前払い金を返還すること
    • 返還義務を負うこととなる場合に備えて、前払金に対して必要な保全措置が講じられていること
  5. (5)サ-ビス付き高齢者向け住宅の工事完了前に前払金を受領することはできません。
  • ※地方公共団体ごとに独自基準が定められている場合があります。詳しくは登録窓口にご確認ください。

[2] サービス付き高齢者向け住宅に対する建設補助金

サービス付き高齢者向け住宅の新築又は改修に当たっては、1戸当たり70万円~195万円を上限として建設費用の10分の1、26分の3又は3分の1が、併設される高齢者生活支援施設は1施設当たり1,000万円(一定の場合は1,200万円)を上限として建設費用の10分の1、26分の3又は3分の1が、それぞれ補助金として交付されます。

補助金の交付を受けるには、サービス付き高齢者向け住宅としての登録に加えて、次に掲げる補助金の交付要件を満たし、サービス付き高齢者向け住宅整備事業事務局(以下、事務局という。)への交付申請を行う必要があります。

(1)補助金交付の条件

2 サービス付き高齢者向け住宅として登録された住宅であること。
3 サービス付き高齢者向け住宅として10年以上登録・運営するものであること。
4 入居者の家賃の額が、近傍同種の住宅の家賃の額と均衡を失しないように定められるものであること。
5 事業に要する資金の調達が確実であること。
6 入居者からの家賃等の徴収方法が、前払いによるものに限定されていないこと。
6 地元市区町村に意見聴取を行い、地元市区町村のまちづくりに支障を及ぼさないと認められるもの。
7 改修を含む事業及び既設改修事業の場合は、以下の全ての要件を満たすもの。
  1. 交付申請時に入居者(又は施設の利用者)がいる場合にあっては、改修工事の実施について、入居者の同意を得ていること。
  2. 改修を行う住宅等が、昭和56年6月1日以降に着工した建築物であること(ただし、一定の耐震改修工事を実施する場合等は除く。)。
  3. 改修を行う既存の住宅等は、築1年以上の建築物であること。
8 サービス付き高齢者向け住宅の入居者が任意の事業者による介護サービスを選択して利用できること。
9 運営事業者又は提携事業者が提供する介護サービス等の内容を、情報提供システムにて公開し、適宜情報の更新を行うこと。
10 サービス付き高齢者向け住宅の運営事業者が遵守するべき事項として、以下に示す3点を遵守する旨を宣誓すること。
  1. 入居者が、希望する任意の事業者による介護サービスを利用できるような環境づくりをすること。
  2. その上で、サービス付き高齢者向け住宅の運営事業者(又は提携事業者)が介護サービスを提供する場合においては、必須である生活支援サービスの対価を含む家賃を、不当に廉価にすることなく、適正な水準に設定すること。
  3. また、サービス付き高齢者向け住宅の運営事業者(又は提携事業者)が介護サービスを提供する場合においては、入居者の希望を尊重しつつも、入居者ができるだけ自立して生活することができるよう、必要最低限の介護サービスを提供するよう努めるとともに、介護度の維持・改善に努めること。
11 事業対象とする住宅において特定賃貸借契約(いわゆるサブリース契約)を締結する場合は、特定賃貸借契約締結前に特定転貸事業者から契約内容の重要事項の説明を受け、書面の交付を受けたことの確認をするとともに、重要事項説明書および特定賃貸借契約書の写しを提出すること。
12 サービス付き高齢者向け住宅の立地は、土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律第9条第1項の規定に基づく土砂災害特別警戒区域、建築基準法第39条第1項に規定する災害危険区域(急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律第3条第1項に規定する急傾斜地崩壊危険区域又は地すべり等防止法第3条第1項に規定する地すべり防止区域と重複する区域に限る。)及び特定都市河川浸水被害対策法第56条第1項の規定に基づく浸水被害防止区域に原則として該当しないこと。
13 「立地適正化計画区域内の居住誘導区域外」かつ「災害レッドゾーン(災害危険区域、地すべり防止区域、土砂災害特別警戒区域、急傾斜地崩壊危険区域又は浸水被害防止区域)内」で建設された住宅のうち、3戸以上のもので、都市再生特別措置法に基づき立地を適正なものとするために行われた市町村長の勧告に従わなかった旨の公表にかかるものに原則該当しないこと。
14 地方公共団体から応急仮設住宅又は福祉避難所としての利用について要請があった場合は、協定締結等の協議に応じること。また、運営上支障がある等の特段の事情がある場合を除き、地方公共団体と協議のうえ、要配慮者(原則としてサービス付き高齢者向け住宅入居資格を有する者)を受け入れること。
15 家賃の限度額は、基準額16万円に公営住宅法施行令第2条第1項一号に基づく公営住宅の存する市町村の立地条件の偏差を表す数値を乗じた額とすること。
16 入居者の要介護状態区分(要介護等の認定内容)に応じて家賃等が設定されていないこと。
17 建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律第2条第1項第三号に規定する建築物エネルギー消費性能基準に原則として適合すること。
18 災害対策基本法第42条第1項に規定する市町村地域防災計画に位置づけられたサービス付き高齢者向け住宅について、水防法第15条第1項第二号及び同法第15条第1項第三号の規定に基づき、避難計画を作成し、避難訓練を実施すること。

(2)補助金の建設費用等に対する補助率と1戸・1施設当たりの上限額

補助金は定額ではなく、①建設工事費等に補助率を乗じた金額と ②1戸当たり(又は1施設当たり)の補助限度額の合計額を比較し、少ない方の金額が補助額となります。なお、既設改修事業を除き、高齢者生活支援施設に対する補助金の合計額は、サービス付き高齢者向け住宅の補助金の額を超えることはできません。

<補助率(上限)>
新築・増築 サービス付き高齢者向け住宅 1/10※4
高齢者生活支援施設※1
改修※2 サービス付き高齢者向け住宅 1/3
高齢者生活支援施設※1
エレベーターを新たに設置する改修工事※3 2/3
改修を目的として住宅等を取得した場合の取得費用(用地費は除く) 1/10
  1. ※1高齢者生活支援施設とは、当該サービス付き高齢者向け住宅の居住者に対して、高齢者の生活を支援するため併設かつ登録された施設をいいます。新築の場合は、地域交流施設等(総合生活サービス窓口、情報提供施設、生活相談サービス施設、食事サービス施設、交流施設、健康維持施設において地域との交流を行うもの)に限ります。また、改修を含む場合は、地域交流施設等に加えて、介護関連施設等が補助対象とされます。既設改修の場合は、地域交流施設等(交流施設において地域との交流を行うもの)に限ります。
  2. ※2高齢者生活支援施設に係る改修工事、住宅の共用部分に係る改修工事、住宅の住戸部分における加齢対応構造等(バリアフリー化)に係る改修工事、省エネ性能の向上のための改修工事及び用途変更に伴う法令適合のために必要となる改修工事及び、既設のサービス付き高齢者向け住宅を改修しIoT機器を導入して非接触でのサービス提供を可能とする場合等の費用に限られます。また、既存ストック型サービス付き高齢者向け住宅を整備する場合に限り、調査設計計画に係る費用が補助対象とされます。
  3. ※3エレベーター設置改修工事の補助限度額は、設置するエレベーターの基数に1,000万円を乗じた額とされます。
  4. ※4ZEH相当水準の整備を実施する場合の補助率は26分の3とされます。ただし、この場合においても、再生可能エネルギー等設備の設置にあっては10分の1とされます。
<サービス付き高齢者向け住宅等の新築工事に係る補助限度額>
(令和6年度事業における新築工事に係る部分のみを抜粋)
事業
部分
補助条件 補助限度額
住宅
部分
夫婦型サービス付き高齢者向け住宅(以下を全て満たすもの)
  • 住戸部分の床面積が30m²以上であること
  • 住戸部分に基本設備(便所、洗面、浴室、台所、収納)が全て設置されていること
(注)入居世帯を夫婦などに限定する場合を除き、補助申請住戸数の2割以内の戸数が上限
1戸当たり
135万円※1
一般型サービス付き高齢者向け住宅
(上記以外のもの)
床面積が25m²以上の住戸 1戸当たり
120万円※1
床面積が25m²未満の住戸 1戸当たり
70万円※1
施設
部分
補助対象となる高齢者生活支援施設 1施設当たり
1,000万円※2
  1. ※1ZEH相当水準の整備を実施する場合は補助限度額が1.2倍とされ、車椅子使用者に必要な空間を確保した便所及び浴室等を設ける場合は1戸当たり10万円が各補助限度額に上乗せされます。
  2. ※2都市再構築型高齢者生活支援施設等整備事業の認可を受けた事業におけるサービス付き高齢者向け住宅内の高齢者生活支援施設で、「スマートウェルネス住宅等推進事業補助金交付要綱」第5第2項の規定に該当するものは、1施設当たりの上限が1,200万円となります。また、高齢者生活支援施設等に係る負担増分用地費が補助対象事業費に加算されます。

(3)補助対象となる費用について

サービス付き高齢者向け住宅の整備費用(建設請負工事費等)が補助対象となりますが、通例、建設請負工事費に含まれる費用でも、補助対象外と認定される費目は補助の対象となりませんのでご注意ください。
例えば、調査費・設計費・宅地造成費など本事業が対象にしていない費用は補助対象外となります(ただし、既存ストック型サービス付き高齢者向け住宅を整備する場合の調査設計計画費用や、建物に付帯する外構工事は補助対象となります)。また、家具・家電・カーテンなど、建物側ではなく、入居者・建物利用者による設置が妥当あるいは一般の賃貸住宅での慣習となっている用品は補助対象外です。
これらの補助対象外費目については、審査において査定指摘されますが、事業者側においても、明らかに補助対象外となるような費目については、予め含めずに事業計画に大きな影響がでないよう、配慮が必要です。

補助対象外となる費目の一例
・業務用厨房における厨房機器・予備照明用管球(器具セット品を除く)
・消火器・家具・家電製品・カーテン・ロールスクリーン等
・サウナ・岩盤浴・可動舞台・躯体一体型シアターセット等

(4)補助金交付の申請受付期限

「令和6年度サービス付き高齢者向け住宅整備事業」の申請受付期限は、令和6年4月3日から令和7年2月28日(事前審査の受付をしている場合も同様)までとされています。しかし、受付期間内であっても令和6年度予算で設定されている補助金の総額に達した場合には、受付を停止されることもありますのでご留意ください。

(5)補助金の交付を受けることができる事業

令和6年度中に事業に着手(工事を実施する場合は工事着工、調査設計計画を実施する場合等は委託契約等を締結)するものが対象となります。交付申請された事業のうち、令和6年度中に着手に至らないものについては、交付決定が無効になります。
なお、交付決定後に事業者の都合で補助事業の期間を変更した場合には、交付決定通知書で示された補助金の額が全て支払われない場合があります。補助事業の期間が変更となる場合には、必ず必要な手続を行ってください。
本補助事業は原則として、令和6年度中に事業完了する事業を対象としています。そのため、事業期間は、原則、交付決定後から令和6年度末までとなります。
工事に要する期間などの事情により、この期間を超えて事業を実施する場合や、複数年度にわたる事業については全体設計承認の手続きが可能ですので、事務局にご相談ください。

(6) 補助金交付の決定等について

交付決定額が1億円を超えることが見込まれる事業については、国土交通大臣名にて、交付の決定、全体設計の承認、計画変更の承認、補助金額の確定が通知されます。

※本サイトに掲載の内容は、令和6年6月現在の法令に基づき作成しております。

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