アパート・マンションを建築する場合、誰の名義で建築するかの選択は大変重要です。相続対策において常に推定被相続人の名義で建築することが有利とは言えません。
アパート・マンション建築による相続税の節税効果は建築完成直後が最大で、その後は、不動産の有効活用による資金収支が毎年継続してプラスであるときは、長生きすると建築直後の相続税の節税効果は徐々に縮減していくことになりますので、建物の名義選択には注意が必要です。設例で検証してみます。
推定被相続人 | 父 | ||
---|---|---|---|
推定相続人 | 長男・長女 | ||
相続財産 | 甲土地(自用地評価額)10,000万円・その他40,000万円 | ||
アパ-トの建築 | 父名義で甲土地の上に建築し全額銀行借入金とする | ||
(1)建築総額 |
3億円 | ||
(2)固定資産税評価額 |
17,000万円(3年毎に5%ずつ値下がりするものと仮定) | ||
(3)借地権割合 |
60% | ||
(4)賃貸割合 |
100% | ||
(5)銀行借入金 |
3億円(25年間で元金均等返済とする) | ||
(6)その他 |
賃料収入で借入金の弁済が可能で、かつ、収支差額はゼロと仮定する | ||
その他 | 甲土地及びその他財産について相続税評価額は変動しないものと仮定する |
アパ-ト建築前 | アパ-ト建築後 | |||
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完成直後 | 5年経過後 | 20年経過後 | ||
甲土地 | 10,000 | 8,200 | 8,200 | 8,200 |
アパ-ト | --- | 11,900 | 11,305 | 8,330 |
その他 | 40,000 | 40,000 | 40,000 | 40,000 |
借入金 | --- | △30,000 | △24,000 | △6,000 |
課税価格 | 50,000 | 30,100 | 35,505 | 50,530 |
相続税額 | 15,210 | 6,960 | 9,122 | 15,449 |
推定被相続人が建築主となるケースで相続税の大きな効果が期待できるのは、建物の完成後数年内に相続が発生することが予想される場合に限られると思われます。それでは、相続の発生がかなり先と予想される場合には、どうすればよいのでしょうか。
その場合、法人で建築することを検討することがよいでしょう。法人で建築するときの留意点としては株主を父とする方法と、子とする方法のいずれの方法によるかによって、土地貸借の選択方法や得られる効果が異なりますので、総合的に判断する必要があります。
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