土地所有者の甲の健康状態に問題がなく近い将来の相続が予測されない場合で、高収益な建物(たとえば、ロードサイドの店舗など)を建築し賃貸することができる状況にあるときには、不動産管理会社で建物を建築し、家賃等を管理会社の収入とし、家族役員に役員報酬として支給することにより収入の分散を図るようにします。このことにより、不動産管理会社を通じて、甲から家族役員に金融資産の贈与を行うことと同様の効果が生じます。この場合の税負担は、給与所得としての課税であり、金銭を贈与する場合の贈与税に比較してかなり低いものとなることが期待されます。
さらに、土地の貸借関係は「通常の地代」による賃貸借とし、不動産管理会社に対する借地権の認定課税を回避するために地主及び借地人である不動産管理会社の連名で「土地の無償返還に関する届出書」を提出することとします。設例で検証してみます。
所有の国道に面している土地に貸店舗を建て、以下のような条件で賃貸することとなりました。
この場合、誰の名義で建築すればよいでしょうか。
相談者 | 甲(65歳) | |
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甲の家族 | 長男・二男 | |
甲の所有財産※ | 所有不動産 | 国道に面する土地(借地権割合60%)2億円 |
その他の不動産 | 5億円 | |
その他の財産 | 3億円 | |
賃貸条件 | ||
建築資金 | 1.5億円(固定資産評価額8,000万円) | |
建設協力金 | 1億円(毎月の賃料から相殺で20年間で返済する) | |
敷金 | 5,000万円(賃貸契約満了時に一括精算する) | |
賃貸期間と賃料 | 20年間・200万円/月 | |
収支差額 | 200万円x12ヶ月ー500万円(建設協力金) ー500万円(必要経費)ー400万円(所得税等) =1,000万円と仮定する。 |
※金額は相続税評価額・今後評価額は変動しないものと仮定します
建物完成直後 | 建物完成後10年経過 | |||
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甲が建築 | 会社が建築 | 甲が建築 | 会社が建築 | |
国道土地 | 16,400 | 16,000 | 16,400 | 16,000 |
その他の不動産 | 50,000 | 50,000 | 50,000 | 50,000 |
その他の財産 | 30,000 | 30,000 | 30,000 | 30,000 |
貸店舗建物 | 5,600 | −−− | 5,600 | −−− |
現金(収支差額) | 0 | −−− | 10,000 | −−− |
建設協力金 | △10,000 | −−− | △5,000 | −−− |
預り敷金 | △5,000 | −−− | △5,000 | −−− |
課税価格 | 87,000 | 96,000 | 102,000 | 96,000 |
相続税額 | 33,000 | 37,500 | 40,500 | 37,500 |
不動産管理会社が建築する場合には、店舗の収入が会社を通じて長男又は二男やその家族が役員に就任するなどにより、それらの者に所得が分散され、結果として、甲の所得税等の軽減に役立ち、毎年の税負担の軽減効果も期待できます。
- ●不動産管理会社の株主構成に留意する
- この対策のデメリットは、甲が建物を所有しないため、建物の相続税評価差額は発生しません。しかし、甲の相続の発生がかなり先と予想される状況においては、毎年の賃貸の収支差額による金融資産の増加を防ぐ効果の方が大きいと思われます。
この対策の留意点としては、借地人である不動産管理会社の株主構成です。この会社は高収益な物件を所有し、特定の賃借人による借上げ方式により安定して経営することが予想されるわけですから、将来において、この会社の株式の評価額は高くなることになります。また、その敷地の20%(建物が賃貸建物である場合には14%)に相当する部分の金額はその不動産管理会社の純資産価額で株式を評価するときに資産として計上しなければならなくなるなど、株式の評価額がアップする要因があります。そのため、資本金の出資に当たっては、子が中心となって株主構成とするよう工夫することが大切です。
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