この制度は、(1)契約期間で借家権が消滅すること、それ故に明渡しを求める際に立退料が不要であること、(2)賃料増減額請求権の排除が可能であること、(3)従来の民法および借地借家法による建物賃貸借契約の期間制限を取り除くなど画期的な内容が盛り込まれています。また住宅にも事業用ビルにも用いることができるなど建物の用途を問いません。
そして、(4)一定の居住用の貸家等を除けば定期借家制度で賃貸する間においては、賃貸契約を借家人から中途解約することを制限することもできます。
さらに、賃料増減額請求権の規定を適用しないこととする特約を結べば契約期間中の賃料は定められた賃料によることとなり、これにより賃貸事業の将来収益が予測可能になりますので、投資家が利回りを適切に把握できるようになり不動産の流動化・証券化にも役立ちます。
もし、きちっと期限がくれば明け渡してもらえるということが担保されるのであれば、もっと良質な借家がより多く供給されることになると予想され、その結果、善良な借家人には得になる制度で、みんなが納得し、「百利あって一害なし」といえます。
●定期借家契約とするための適用要件(書面による契約と説明義務)
期間の定めがある建物の賃貸借をする場合においては、公正証書による等書面によって契約をするときに限り、契約の更新がないこととする旨を定めることができるとしています。
また、定期借家制度で建物の賃貸借をしようとするときは、建物の賃貸人は、あらかじめ、建物の賃借人に対し、建物の賃貸借は契約の更新はなく、期間の満了により当該建物の賃貸借は終了することについて、その旨を記載した書面※を交付して説明しなければならないとされています。
※建物の賃借人の承認を得た場合、電磁的方法により提供することができます。
建物の賃貸人がその旨の書面の交付や説明をしなかったときは、契約の更新がないこととする旨の定めは無効とすることとしています。
出典:近畿定期借地借家権推進機構
安定収入の確保(地代) | |
一時金の資金運用 | |
固定資産税の評価を住宅用地として下げることが可能 | |
未利用地よりは相続税の評価が低くなる | |
物納・売却可能 | |
財産分割しやすい | |
虫食い開発を防げる | |
期間満了後には更地に戻るので、土地の値上がり益を享受できる | |
立退料不要(承諾書明記) |
立退料がいらない | |
契約期間中の家賃を一定にすることが可能 | |
事業用賃貸では長期安定収入が得られる | |
既存の空家の活用ができる | |
持家を賃貸に出すことによって年金収入を確保できる | |
安心して相続税対策としてのアパ-ト経営ができる |
- ●定期借地と定期借家の選択基準
- 定期借地による場合には、安定した地代が得られるものの収益性は定期借家に比較して高くないと思われます。しかし、経営リスクは小さく、かつ、建物のメンテナンスなどの手間はかかりません。
一方、定期借家による場合には、地主自らが建物を建築することから、相続税の軽減効果は高くなりますが、反面、経営リスクも高まることになります。そこで、建設協力金方式(地主がテナントと賃貸借契約を結び、そのテナントから貸与された保証金や建設協力金でテナントの店舗を建築する方法)で賃貸建物の建築を行うことができれば、経営リスクはかなり軽減させることが可能となります。それでもテナントの中途撤退リスクが残りますので、建物の賃貸借契約書に中途撤退時のペナルティ条項(建設協力金等の全額没収など)を盛り込んでおくことは必要です。
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