税務の専門家がポイントを解説 TKC税務講座

[特別編] 住宅取得等資金に係る贈与税の非課税特例 子や孫が住宅を購入・建築しようとする際、親や祖父母が援助するのを、税制がバックアップしています。その税制のポイントを解説いたします。

税理士法人今仲清事務所 税理士 今仲 清

[8] 贈与者に相続が発生した場合の加算はどうなる

贈与者に相続が発生した場合には、相続税の計算上次のように取り扱われていますが、「住宅取得等資金贈与の非課税特例」の適用を受けて贈与された金額は、相続税の計算上加算しなくてよいこととされています。その意味で、相続税が課税される方にとっては有利といえます。

1. 暦年贈与

相続によって財産を取得した者が、被相続人から相続開始前3年以内に贈与を受けていた財産は、基礎控除で贈与税が課税されなかった財産も含めて、相続税の計算上相続財産に加算されて相続税が課され、既に支払った贈与税があればこれを控除することとされています。

2. 相続時精算課税贈与

相続時精算課税制度によって被相続人から贈与を受けた財産は、贈与からの経過年数にかかわらず贈与者に相続が発生して被相続人となった場合の相続税を計算する際に、贈与時の課税価額を相続財産に加算することとされ、相続時精算課税によって既に支払った贈与税がある場合には、相続税額から贈与税を差し引いて相続税を納付し、相続税額より既に納付した相続時精算課税によって支払った贈与税額の方が多ければ、超過額を還付することとされています。
※令和6年1月1日以後は、相続時精算課税制度に基礎控除が創設され、暦年課税制度の相続前加算期間が3年から7年に延長されます(別ページ「贈与税改正と生前贈与による対策」参照)。

[9] 手続きを忘れないようにしましょう

この特例は贈与を受けた翌年3月15日までに、贈与税の申告書にこの特例の適用を受ける旨を記載し、必要な書類を添付して手続きをした場合に限って適用されますので、忘れないように申告しましょう。

[10] 居住見込みの年の12月31日までに居住しなければ贈与税の納税が必要

住宅取得資金等の贈与を受けた年の翌年3月15日にまだ居住していない場合でも、遅滞なく居住することが確実であると見込まれるときは適用が認められるのですが、住宅取得資金等の贈与を受けた年の翌年12月31日までに居住していなければ修正申告書を提出して通常の贈与税を納めなければなりませんので注意してください。

[11] 非課税特例を活用するとこんなことも可能

1. 3世帯住宅の建て替えを無税贈与で行う

3世代が住んでいる50年以上経過している家屋で、たとえしっかりしている造りでも省エネや利便性から建て替えることになったとします。90歳前後の祖父から60歳前後の親(子)と30歳前後の子(孫)がそれぞれ住宅取得等資金贈与の非課税特例1,000万円と贈与税の基礎控除110万円、合計1,110万円ずつの贈与を受け、それぞれの自己資金2,000万円と合計で6,220万円の家に建て替えたとします。親(子)と子(孫)それぞれ2分の1名義の共有で登記をして、翌年3月15日までに居住を開始し、贈与税の申告をすると贈与税を無税で親子名義の建物に建て替えたことになります。祖父に相続が起きた場合には、たとえ贈与を受けてから3年を経過していなくても、2,000万円を祖父の財産として相続税の計算上加算する必要はありません。

2. 単独なら非課税特例と相続時精算課税贈与のセットも

共有ではなく子が単独で住宅を取得という場合には、相続時精算課税贈与で2,500万円、非課税特例1,000万円の合計3,500万円まで親からの無税贈与で家を取得することが可能です。ただし、親の相続開始の際には相続時精算課税贈与の部分については相続財産に加算して相続税が課税されることを忘れないでください。
※令和6年1月1日以後は、相続時精算課税制度に基礎控除が創設され、暦年課税制度の相続前加算期間が3年から7年に延長されます(別ページ「贈与税改正と生前贈与による対策」参照)。

※本サイトに掲載の内容は、令和5年6月現在の法令に基づき作成しております。

TKC税務講座TOPへ戻る

積水ハウスの土地活用実例見学会に参加する