物納財産については、物納に充てることができない財産〔物納不適格財産〕と他に物納適格財産がない場合に限り物納が認められる財産〔物納劣後財産〕が、定められています。
物納制度については、「借地人に賃貸している貸宅地は物納できない。」などと言った誤解をよく耳にしますが、借地人がいることを理由に収納されないということはありません。あくまでも、物納財産の選択は、物納不適格財産・劣後財産に該当しない限り、その選択権は納税者に委ねられていますので、金銭納付が困難な場合に、国は物納申請されたものが、物納適格要件を満たす不動産であれば収納してくれます。
相続税の物納は、下記のすべての要件を満たす必要があります。
延納によっても金銭で納付することが困難な金額の範囲内であること | |
申請財産が定められた種類の財産で申請順位によっていること | |
申請書及び物納手続関係書類を期限までに提出すること | |
物納適格財産であること |
定められた物納順位において不動産は第1順位であり、不動産であれば更地でも貸宅地でも同じ第1順位です。
貸宅地は処分可能価格と相続税評価額を比較するとほとんどの場合、相続税評価額の方が高いのが一般的です。これは、貸宅地の相続税評価額の求め方にその原因があります。貸宅地の相続税評価額の求め方は、自用地(更地)の評価額から借地権価格を控除して求めます。この計算方法では、借地権と貸宅地とを合計すると100%の価格になります。一見、合理的な算式に思えますが、この算式が成り立つ条件は、借地権と貸宅地とを一緒に処分する場合に限られます。仮に貸宅地だけを処分しようと思うと、ティカップのお皿だけを売りに出すようなもので、到底まともな値段では処分できません。また、一般的には投資利回りも著しく低く、かつ、借地権の返還が期待できません。
むしろ、通常は借地人以外には売却することが難しい貸宅地を相続税評価額で国が買い取ってくれると解釈すれば、物納制度は非常に納税者にとって有利な制度といえます。有効活用が可能な更地を相続税の納税のために手放すのでなく、物納制度を賢く利用して、相続人にとって収益性が低い財産などを納税に充てることにより、優良な資産を子孫へ遺すことが可能となります。
なお、物納が許可され、国への所有権移転の登記がされるまでの間、地代等は相続人等において収受することができます。
貸宅地が物納に適しているか否かに関する主な調査項目は、
契約当事者が不確定又は契約内容が不明確ではないか | |
社会通念に照らし、契約内容が貸主に著しく不利ではないか | |
貸付料が不当に低廉ではないか | |
賃貸料が相当期間滞納となっていないか | |
その他、契約の円滑な継続が困難なものではないか |
等を調査します。
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