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空家等対策推進法のポイントと対策

税理士法人今仲清事務所 税理士 今仲 清

[4] 特定空家等の敷地にかかる固定資産税等は約3.6倍に!

特定空家等又は管理不全空家等として勧告の対象となると、たとえ建物が建っていても住宅用地にかかる固定資産税及び都市計画税の課税標準の特例対象から除外されます。住宅用地の特例が適用されている200m²以内の敷地で、その固定資産税評価額が1,000万円の場合、固定資産税額・都市計画税額の合計は33,200円となります。これが、特定空家等又は管理不全空家等として勧告の対象となると、固定資産税額・都市計画税額の合計は119,000円となり、なんと約3.6倍となります。しかも建物を取り壊さなければ、空き家である建物に対しても従来どおり固定資産税・都市計画税がかかります。

<設例>

<設例>

[5] 長期間空き家の賃貸不動産は相続税対策で不利に

貸家及びその敷地の所有者に相続が発生した場合のこれらの相続税評価は、宅地の自用地としての価額や家屋の価額から、「借家権割合」や「貸家建付地割合」等を乗じたものを差し引く方法で評価されますが、長期間空き家状態が続いている建物とその敷地については、借家権割合や貸家建付地割合を控除することができない場合があります。
相続税評価上の空き家(空室)については、「課税時期前に継続的に賃貸されてきたものであること」や、「空室の期間が、課税時期前後の例えば1か月程度であること」などの一定の状況にある一時的な空き家(空室)の場合は、課税時期においても賃貸されていたものとして取り扱って差し支えないこととされておりますが、空き家が長期間継続しているような場合には、相続開始までに解消するようにしておく必要があります。

[6] 老朽貸家建替えによる相続税額引下げ効果

昭和40年代、50年代に建てられた賃貸集合住宅は、建築から40年以上が経過して老朽化しているものが多くなっています。老朽化で空室の多くなった貸家は、いずれかの時点で建替えをするか、除却するか、売却するかなどの整理が必要になりますが、不動産所有者が高齢になると、交渉力と決断力が必要な老朽貸家の整理をすることが困難になってきます。どうしても後継者の代になってからでいいとして、先送りされがちです。しかし、不動産所有者が健在の間に整理を行って亡くなるのと、不動産所有者が亡くなってから老朽貸家の整理にとりかかるのでは、次のように相続税対策上は大きな差が出ます。

1. 立退費用

集合賃貸住宅の建替えの場合は、立退き交渉をし、不動産所有者が亡くなる前に交渉が成立すれば、立退料等の諸費用を支払うことになります。その後、不動産所有者が亡くなれば立退料相当額の相続財産が減少しています。一方、相続した後に後継者が老朽貸家の整理を実施して立退料を支払う場合には、立退料相当分の財産に相続税が課税されてしまった残りで立退料を支払わなければなりません。

2. 借家権割合及び貸家建付地割合の控除

仮に10戸の集合住宅のうち、長期間にわたり2戸しか入居者がいない場合、賃貸割合は20%ですので、建物の評価額から控除される借家権割合は30%×20%=6%しか、土地の自用地評価額から控除される貸家建付地割合は借地権割合60%の地域であれば、60%×30%×20%=3.6%しか控除できません。建替えが完了して100%入居していれば、建物の評価額から30%を、土地の自用地評価額から18%をそれぞれ控除できます。

3. 建物評価減の効果

建物の評価額は、新築すると建築価額の60%程度の固定資産税評価額で評価されます。仮に2億円で建築すれば固定資産税評価額は高くても1億2,000万円程度です。しかも借家権割合30%が控除されれば8,400万円が建物の評価額となり、大きな相続税評価額の減額効果が見込めます。

4. 債務控除

老朽貸家の場合、債務として残っているのはわずかな入居者からの預かり敷金又は保証金の残高です。建て替えた後は建物建築資金の借入金や入居者からの預かり敷金又は保証金の要返還分が債務控除の対象となります。

<老朽貸家の建替えによる相続税額引下げ効果>

<老朽貸家の建替えによる相続税額引下げ効果>

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