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空家等対策推進法のポイントと対策

税理士法人今仲清事務所 税理士 今仲 清

[7] 高齢化で住まなくなった空き家の対処法は?

1. 在宅介護に向いていない居宅

高齢者の方が20代や30代に購入した子育てのための居宅は、バリアフリーではなく、まして車いすにも対応していません。子どもが独立し、夫婦二人が元気な間は問題ありませんが、日常生活に支障が出てくる年齢になると、在宅で介護を受けたくても段差が多く、トイレやお風呂などの日常の生活には不便なことが多いものです。最近はサービス付き高齢者向け住宅も充実してきており、ケアハウス、介護老人保健施設、特別養護老人ホームなどの高齢者向け施設に入居される方が増えてきています。そうすると、今まで住んできた居宅をどうするかが問題です。空き家のまま長期間管理せず放置しておくと空家等対策推進法の「特定空家等」又は「管理不全空家等」として指導の対象となるおそれがあります。売却、改修して賃貸、建替えによる賃貸、不動産業者などが管理を代行する空き家管理サービスなどを検討する必要があります。

2. 居住用財産を譲渡するなら住まなくなった日から3年以内

高齢者施設に入居する資金や今後の生活資金のために自宅を譲渡せざるを得ない場合もありますが、この場合には譲渡益に係る税金に注意が必要です。居住用財産を譲渡した場合には、3,000万円特別控除や軽減税率の特例などがあるのですが、これらの特例は住まなくなった日から3年以内に譲渡しなければ適用されません。当面資金が必要ないので、様子を見て売却しようとされている例もあります。サービス付き高齢者向け住宅や有料老人ホームなどに入居した場合、旧自宅には居住していないこととなりますので、入居の時点から3年以内に譲渡しなければ特例の適用ができませんのでご留意ください。

3. リバースモーゲージによる老後資金の調達

自宅を担保として、毎月一定額の生活費用を借り入れるリバースモーゲージという方法があります。将来所有者が死亡した時点で売却して精算することが前提です。住宅ローンを完済していれば、家に居住したまま生活費の不足分を補うことを目的とすることも考えられます。また、少し高級な有料老人ホームに入居するには一時金が不足するので、これを補うために利用するケースもあります。施設入居の場合には、自宅の有効活用をセットとしている商品もあるようです。あくまでも死亡時に売却して精算することが前提ですから、契約時点の譲渡価額を基にして限度額が決められます。もちろん夫婦の両方が死亡するときまで契約することが可能な場合もあります。

4. 自宅を改修して賃貸する

旧家のような広い自宅で資金に余裕のある場合には、将来相続人が引き継いで居住する予定がなければ、改修して賃貸することも可能です。最近よく見受けられるのが、部屋がいくつもある古い旧家の各部屋を個室に改修してシェアハウスとして賃貸する例です。トイレや風呂及び台所などを共同で使用し、独身の男女が共同生活をするシェアハウスの人気が高いようです。借りる側にとっては家賃が安く済み、貸す側にとってはトータルで高い収益性があります。古い建物を取り壊すことなく、その雰囲気を活かした良い方法といえますが、改修に係る費用と賃料収入の収益性をしっかり確認しておく必要があります。

5. 都心部の自宅の建替えによる賃貸経営

都心部の敷地が30坪から60坪程度の1戸建てでも、売却するのではなく、建て替えて賃貸経営をしている例も増えています。施設に入居するのではなく、自宅で介護を受けながら余生を過ごしたいというご希望の方も多いようですので、例えば3階建てで自宅部分(3階)を完全バリアフリーでお風呂やトイレも介護仕様にし、1・2階を賃貸併用にすることで建替え費用を軽減するケースもあります。敷地の広さと立地による賃貸市場の状況などによって検討できる地域もあるでしょう。今後必要と見込まれる生活費と、自己資金、年金収入見込みなどと、建替えに必要な資金及び賃料収入の見込みなどを総合的にシミュレーションし、慎重に計画を立てて実行する必要があります。

賃貸住宅経営をされている方にとって空き家や空室の状態が続くことはもともと好ましいものではありません。ご自身の健康状態や資金など様々な要因で空き家や空室の状態が続いていることもあるでしょう。また、相続した自宅が空き屋状態となるケースもあります。これを機会に収益確保と相続税対策のためにも空き家や老朽貸家の整理に手を付けられてはいかがでしょうか。

※本サイトに掲載の内容は、令和6年6月現在の法令に基づき作成しております。

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