「百一年の家の絵本」、はじまりのはじまり。
2021年12月のある日、品川の積水ハウスの住宅展示場に、キャンバスと画材道具一式を抱えて現れた荒井良二さん。今日この場所が、荒井さんのアトリエであり、「SEKISUI HOUSE meets ARTISTS」の作品制作のはじまりの場です。
「百一年の家の絵本」は、購入されたオーナー様と対話しながら、その家のためだけに「百一年の家の絵本」を描いていただく企画ですが、そのはじめの作品として、荒井さんご自身に“荒井家の絵”を描いていただくことになりました。
真っ白なキャンバスを前に、「さて、家だよ」と、はじまりの合図のような言葉がこぼれた荒井さん。さまざまな色の絵の具を指でキャンバスにのせながら、近づいたり、離れたり、しゃべったり、時には唸ったり....止まることなく描き続けていきます。
描き進めていくにつれ、「子供の頃から、ただ色を塗るのが楽しかったんだよね。“絵”になる前のあの感じが」と、幼い頃のことを振り返りながら、私たちに様々な思い出を話してくれました。
その話や変わり続ける絵に夢中になっているうちに、すっかり日も暮れてこの日は解散。荒井さんは制作途中の絵を持ち帰って、次回の撮影の日程までに仕上げていただくことに。
年をまたぎ、約1ヶ月後。
私たちの前に現れた絵の中には、まったく別の世界が広がっていました。「この前の絵を完成させてもよかったんだけどね、なんかね、新しく描いてきたんだ」と言って見せてくださったのが、今回完成した「百一年の家の絵本」です。
じんわりと暖かい灯りが溢れ出してくる、穏やかでにぎやかな美しい絵。私たちスタッフは、前回の絵とは違う作品になったことに驚きながらも、目の前の奥深い豊かな絵の世界に一瞬で引き込まれました。
前回の制作途中に荒井さんが話していた、「誰かが帰るところ、行き着くようなところが書きたいなあ」という言葉が浮かび、じんわりと響いてきます。
絵に書かれた言葉も、前回まで「百年の家の物語」で進んでいましたが、「百一年の家の物語」に変更。その意図についてはインタビューでも触れているので、ぜひ読んでみてください。
続いていく、つないでいくひとつの家の物語のはじまり。荒井さんが、まだ見ぬどこかの家と出会い、その家のために描く絵がどんな風に暮らしを灯していくのか。とても楽しみです。
写真 阿部 健
文 菅原良美(akaoni)