障がい者グループホーム 台の森プロジェクト(宮城県仙台市)
障がい者グループホームが、持続可能な地域コミュニティーづくりの一員に
代々受け継いできた屋敷林などの豊かな地域資源と暮らしの記憶を、地域の子どもたちと共に持続可能なコミュニティーづくりを通して継承するプロジェクト。森のように存在する敷地に障がい者グループホームや陶芸教室、カフェ、ギャラリー、レストランが共存する、多世代交流の地域複合拠点。新しいデザイン手法により地域の方々にも喜んでいただける継続的な仕組みづくりに挑戦した事例です。
2021年度 キッズデザイン賞 奨励賞 キッズデザイン協議会会長賞 受賞
【受賞理由】
地域に代々住まう「人」に着目した多世代交流かつ歴史文化の伝承プログラムで、細部にわたり工夫が読み取れる。まちの成り立ちや暮らしぶりなどを高齢者からヒアリングし、子どもたちは建築·外構作業に参加している。コミュニティーの希薄化が問題視されるなか、子どもたちのまちづくり参画のロールモデルになり得る骨太なプロジェクトである。
藩政時代より植え育て受け継いできた屋敷·樹木を、地域の方々にも喜んでいただけるように活用。大きな欅の木陰がつくる風の通り抜ける居場所ができ、障がい者グループホームの利用者やスタッフ、カフェスタッフ、訪問者らが自然と交流し合っています。また、地域の子ども達には屋敷内の樹木や土を使って、蔵ギャラリーの建築、中庭部分のウッドデッキづくりや、井戸の修復作業などを手伝ってもらいながら、日本の“もったいない文化”や必然として受け継がれてきたサステナブルな考えを自然の循環の中で感じてもらえる様、地域資源の活用を社会福祉法人スタッフも含め運営関係者らで行いました。
障がい者グループホーム
女性棟として計画。運営法人の女性スタッフと内装の雰囲気や仕上げ素材などを選び、細やかな配慮を施した居心地の良い空間となりました。様々な世代の方や地域の方と自然に交流がうまれ、地域理解をすすめることができたり、家族とグループホームスタッフが一緒にカフェで過ごしたりできています。森を通じて関係性をつくるなど、仕事場としても心地よく過ごしやすい環境を実現しています。
入り口から玄関まで緩やかなスロープでアクセスできるので、車いすの方でも安全に出入り出来る。
森を眺めることができるようリビングが配置されている。カウンターキッチンになっていて、カフェのようなダイニングスペースからは季節毎の草花や野鳥たち、梅の実がなる様子などを楽しめる。
カフェ
多世帯交流の核となる場である、陶芸教室を併設したカフェ。広々としたウッドデッキは敷地内で伐採した杉材でDIY。カフェ内部も運営メンバーが床板張りや壁の漆喰塗を行いました。陶芸教室とカフェの運営は親子でそれぞれ担当しています。
レストラン
建築事務所「ひとともり」が基本設計とインテリアを担当。自然光の取入れ方など細部まで意見交換しながら、子ども達と共に店舗内装の壁や天井を漆喰やペンキでぬったりウッドデッキをつくったりと手作りで仕上げました。
レストランの前に畑スペースを設け、井戸水を使いオーガニックな野菜作りにチャレンジ。地産地消のメニューを提供しています。
アプローチ
回遊できる緑の散歩道。敷地内の木々の間を縫いながら歩くことができる。踏み石には地域材の秋保石を配し、季節毎に咲く花々や、新緑や紅葉、鳥や蝶を観察することができる。
蔵ギャラリー(※「木工房瑞」施工)
地面から生えているような感じがする“版築”土壁の築造法。「木工房瑞」杉原氏が、敷地内に元々あった板倉を、宅内で成長した材と土を使って一回り大きくし蔵ギャラリーとして蘇らせた。ギャラリーで定期開催される手作りの洋服の展示販売では、障がい者グループホーム利用者のつくったアートピースとコラボレーションした商品などが作られた。
蔵ギャラリー建築には地域の子どもたちも参加。写真は竹小舞の作業をしているところ。
施設情報
開所年月
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2020年5月
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タイプ
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障がい者グループホーム、店舗併用住宅
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定員
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障がい者グループホーム 7名
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敷地面積
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2363㎡
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延床面積 |
障がい者グループホーム 178.8㎡
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カフェ 103.52㎡
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レストラン 110.25㎡
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共同プロジェクト者
・ひとともり一級建築士事務所
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長坂純明 氏
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・木工房 瑞 |
杉原敬 氏
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・里見釜 |
田代里見 氏
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・satomi kiln café
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田代成 氏
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・Largo Trattoria
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栗原聡 氏
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・社会福祉法人 なのはな会
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加賀谷尚 氏
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