めざしたのは、猫が心から安らげる住まい
せっかくマイホームを持つのなら、空間を隅々まで味わい、使いこなしたいものだ。Iさま邸のご主人はまさに達人で、吹き抜けに架かる梁からカーテンレールの上部まで、暮らしの舞台としている。
「この家は、猫が主人で、私たち夫婦は居候というか……。猫の動線や楽しみを最優先した“猫仕様”の設計にしてあるんです」と奥さま。その言葉どおり、室内を見まわすと、キャットウォークをはじめとするさまざまな猫専用の仕掛けが目に入る。「もともと猫が好きで飼ってきたのですが、猫を人間のエゴに付き合わせてしまっているのではないかと疑問に思うこともあって。せめて猫が、少しでも快適に過ごせる家にできればと考えました」。
そんな夫妻の思いを知ってか知らずか、猫たちはのびのびと家中を駆けまわっている。
東日本大震災を機に、家づくりを決意
現在、Iさま邸に暮らす猫は全部で15匹。いずれも奥さまが保護した迷い猫だ。「夫が猫好きになってくれたころから、急激に増えていき……。当時は仮住まいの賃貸アパートにいたので、大所帯を飼うには手狭に感じていました」と奥さま。「そんな中で東日本大震災が。さらに一時避難した妻の実家の隣家が火事になったり、借りていたアパートは浸水の恐れがあるとわかったり。そこで、もしもの時に備えて、猫と一緒に安住できる家をつくろうと決心したのです」と、旦那さまが続く。
その後ご夫妻は、10軒以上の猫カフェをめぐるなどして、猫仕様のプランを徹底的に検討したという。
15匹それぞれの猫生を見守る毎日
ハウスメーカー数社に設計依頼をして検討したが、積水ハウスを選んだ。「設計担当の方にイメージを伝えると、すぐにスケッチパースを描いてくださって。ヴィジョンが鮮明になり、感激しました」(奥さま)。また、猫に特化した珍しい希望に、他社では難色を示されることもあったが、「積水ハウスはリズムを合わせて進めてくれた」と振り返る。
時間をかけて考え抜いた猫仕様と、耐震や防火といった性能面に加えて、ご夫妻が希望したのは、「猫の動く姿が際立つ、シンプルなデザイン」。白で統一した空間は、造作棚を壁埋め込み式とする積水ハウスからの提案により、期待以上にモダンですっきりとした印象に仕上がった。
「ねずみと名付けたキジトラは、僕が最初に飼った猫。よく懐いてくれているんです。朝仕事に行く時は、玄関まで見送りに来てくれます」と旦那さまは声を弾ませた。
「猫と一緒に年齢を重ねていけるのは幸せ。ともに暮らしてもらえることに感謝しながら、それぞれの“猫生”を見守りたいと思います」(奥さま)。タイプや年齢、拾った時期もばらばらの猫のきょうだいが、各々心地よく過ごしている。