趣味とつながる住まい
登山を中心に、幅広いアウトドアの趣味を持つSさま夫妻。「自然に身を浸していると心がリセットされて、自分が自分に戻れるような感じがするんです」と旦那さまは話す。目下計画しているのは、奥さまの出身地・愛媛県にある石鎚山の登頂。最終的には、世界でもっとも高い独立峰であるキリマンジャロにも登りたいと意気込む。
そんなご夫妻が求めたのは、アウトドア用品を納めるガレージのある平屋の住まいだ。「積水ハウスの軒の深い設計に惹かれて、建築を決めました」(旦那さま)。ゆとりある軒下空間に面した土間ダイニングの大開口からは、広い空と緑豊かな風景を一望する。
東向きのダイニングには、朝日が差し込む。「この時間が一番綺麗なんです」(旦那さま)。毎朝のゆっくり流れるコーヒータイムを彩っている。窓からの景色を楽しめるこの家の特等席に、玄関からつながるダイニングを配置した。
長く愛せるものだけを揃えた空間
お気に入りの道具が賑やかに並ぶガレージと対照的に、リビング・ダイニングはミニマルにまとめた。「シンプルに暮らしたいと考え、『何も要らない』と伝えました。二人の生活に必要で、これはずっと愛せるだろうなというものだけを揃えています」(旦那さま)。一方奥さまは、図書館のような壁一面の本棚を希望した。「市販の木材では長さや強度が足りなかったのですが、設計士さんのアイデアで構造用の梁を使って実現しています」。
住まいに馴染む木製家具は、自分たちの好みにあわせて旦那さまがDIYしたもの。「近所にある実家が農家で、大きな倉庫を持っていて。その一角を工房にしているんです」(旦那さま)。いちからつくった家具は愛着もひとしお。壊れても手入れしながら、長く使い続けるつもりでいる。
立ち止まって見つけた新しい道
ご夫妻らしさを大切にした家づくりの背景には、家族の一大決心があったという。「今年21歳になる息子がいるのですが、コロナ禍で当時通わせていた高校が休校になって……。いろいろと考える中で、今後はお互いに好きなことをやってみようかと提案したんです。それで、息子は通信制の学校に転校、私は転職する道を選びました」(旦那さま)。
旦那さまは現在、酒樽をつくる企業に職人として勤めている。「チャレンジする背中を息子に見せたいと思い、未経験で入社しました。繁忙期が登山に最適な春先と重なるのが残念ですが、経験を積んで頼られる立場にもなり、日々とても充実しています」。