
声安藤サクラ
一人旅が好きな私は、
家を建てるのが怖かった。
それはまるで、
「どこへでも行ける自由」を
自ら手放してしまう、恐ろしい約束のように思えた。
私は、どこへも行けなくなってしまう。
夫が家を建てようと言ったあの日、
希望ではなく、不安が心のうちに広がった。
あれから5年。
私はリビングのソファに座り、
かすかに聞こえる家族の寝息に耳を澄ましていた。
月明かりが壁につくった木々の影が、
風に吹かれ、ゆらゆらと揺れている。
家は建ったが、私はまだ自由だ。
こうして、吹き抜けの窓から見えるあの月を眺めていると、
いまここも、私が旅してきた世界と、
紛れもなく、ひと繋がりなのだと感じることができる。
或いは、旅先で月を見るたびに、
私はこの窓から見えるあの月を思い出し、
家と家族を想う。
帰るべきこの場所があるから、
私は、どこへでも行けるのだ。
それはまるで、
「どこへでも行ける自由」を自ら手放してしまう、恐ろしい約束のように思えた。
私は、どこへも行けなくなってしまう。
夫が家を建てようと言ったあの日、
希望ではなく、不安が心のうちに広がった。
あれから5年。
私はリビングのソファに座り、かすかに聞こえる家族の寝息に耳を澄ましていた。
月明かりが壁につくった木々の影が、風に吹かれ、ゆらゆらと揺れている。
家は建ったが、私はまだ自由だ。
こうして、吹き抜けの窓から見えるあの月を眺めていると、いまここも、私が旅してきた世界と、紛れもなく、ひと繋がりなのだと感じることができる。
或いは、旅先で月を見るたびに、
私はこの窓から見えるあの月を思い出し、
家と家族を想う。
帰るべきこの場所があるから、
私は、どこへでも行けるのだ。

月の道しるべ
声安藤サクラ
0:00

MORE
家から生まれた物語
声:安藤サクラ
ARCHIVE
物語を生んだ家
ARCHIVE
、。