人と自然の共生社会 「新・里山」と「希望の壁」

「5本の樹」計画に基づく「新・里山」は、大阪駅にほど近い「新梅田シティ」に整備され、近隣住民やオフィスワーカーが身近な自然を感じることのできる憩いの場です。「希望の壁」と共にSEGES「都市のオアシス」に認定されています。

「5本の樹」計画の実践の場「新・里山」

 積水ハウスの本社が所在する「新梅田シティ」は、「梅田スカイビル」(40階、173m)を中心とした大阪の代表的なランドマークで多数の外国人も訪れる注目のエリアです。

 2006年に当社が整備した「新・里山」は「梅田スカイビル」の足元、「新梅田シティ」の北側8000m²にわたり広がっています。もともとワイルドフラワーが中心の「花野」であった場所に、当社「5本の樹」計画の考え方に基づいた500本を超える日本の在来樹種と200種類以上の低潅木・草花を追加で植栽し雑木林をつくっています。加えて棚田や畑なども配し、失われつつある日本の原風景「里山」を都心部に再現しています。

 13年の歳月を経て、多種多様な植物が成長したことで緑量も増え、鳥や蝶などをはじめとする多くの生き物が飛来し、住み着き、育ってきました。

 通常、都会では見られない「ハイタカ」や「オオコノハズク」などの猛禽類が飛来したことも確認されています。2013年には絶滅危惧種である「ミゾゴイ」が飛来し1カ月以上「新・里山」に滞在しました。今まで一般的であった雑草や枯葉をすぐに撤去してしまうような消費型の管理ではなく、雑草を抜かない下草刈り、枯葉を林床にそのまま置いて堆肥化させるなど 里山で行われてきた自然に負荷の少ない循環型の管理を行うことで、土壌生物も豊富になり、食物連鎖の幅を広げることで、たくさんの生き物が生息する森をつくっています。

 当社に所属する樹木医の指導の下、新梅田シティ専属の造園会社の社員が、常駐で管理を続けています。

 近隣住民やオフィスワーカー、訪れる市民の皆様にも身近な自然を感じることのできる空間として親しまれています。

写真:「新・里山」を北側から望む

「新・里山」を北側から望む

写真:生態系ピラミッドの頂点に位置する「ハイタカ」が飛来するほど豊かな生物多様性を保持しています

生態系ピラミッドの頂点に位置する「ハイタカ」が飛来するほど豊かな生物多様性を保持しています

写真:2013年10月 絶滅危惧種「ミゾゴイ」が飛来し約1カ月滞在。ミミズなどの土壌生物が豊富なため

2013年10月 絶滅危惧種「ミゾゴイ」が飛来し約1カ月滞在。ミミズなどの土壌生物が豊富なため

「新・里山」の四季折々

写真:春

写真:夏

写真:秋

写真:冬

緑化モニュメント「希望の壁」

 「新・里山」の東側に位置する高さ9m・長さ78m・奥行3mの巨大な緑化モニュメントである「希望の壁」は、建築家・安藤忠雄氏の発案により当社が2013年に建設しました。

 壁の表面は、ソヨゴ、クチナシ、サザンカ、ヤブツバキ、ヤマブキ、フジ、オオイタビなどの「5本の樹」計画選定樹種を中心に約100種類2万本以上の多彩な植物で緑化壁を覆っています。開花時期や葉の色付く時期の異なる植物の計画的配置により、四季に応じて変化する表情を楽しむことができます。

写真:「希望の壁」と「梅田スカイビル」

「希望の壁」と「梅田スカイビル」

図:「希望の壁」

地域の子どもたちやオフィスワーカーと「新・里山」を通してはぐくむコミュニケーションの場

 「新・里山」では、地元の小学生や幼稚園児への教育の場として、オフィスワーカーの農作業ボランティア活動の場として、地域密着型のコミュニケーションの場として日常的に親しまれています。近隣の幼稚園、小学校を対象にした教育支援活動を2007年より毎年行っています。毎年5年生児童が行う稲作作業、田植えや稲刈りなど単独の作業ではなく、田植えに始まり、雑草取り、稲刈り、はざかけ、足踏み式脱穀機や唐箕(とうみ)を使った脱穀作業、餅つきなど機械を使わない昔ながらの一連の稲作体験をします。幼稚園児にはサツマイモ掘りだけでなく、苗の植え付けから、そして収穫後の地上部の葉の堆肥化のお手伝いまでしてもらっています。

 その他「希望の壁」でも、地元の方々、子どもたちに愛着を持ってもらうことを目的に、年間を通じてさまざまなイベントを実施しています。

 「希望の壁」を世界最大の「バタフライ・ウォール」にしようという思いを込め、蝶の飛来と産卵を促すため幼虫の食草であるミカン科やクスノキ科の常緑樹、キャベツやニンジンの苗などを「新・里山」内にある「バタフライ・ガーデン」に植えています。さらに、「新・里山」で育った幼虫が成虫となり「希望の壁」に吸蜜に訪れるよう、それを促す草花を「希望の壁」に植えています。

 また、オフィスワーカーによるボランティア組織「新梅田シティ里山くらぶ」では、勤務前にする「朝活」や、昼休み時間内にする「昼活」に加え、かかしづくりや収穫したモチ米を使った餅つきなどもイベントとして行っており、新梅田シティに入居する各社のコミュニケーションの場をはぐくんでいます。

教育支援活動(幼稚園児・小学生対象)

写真:サツマイモ苗の植付(5月)

サツマイモ苗の植付(5月)

イモ掘り(10月)

イモ掘り(10月)

写真:田植え(6月)

田植え(6月)

写真:草取り(7月)

草取り(7月)

写真:稲刈り(11月)

稲刈り(11月)

写真:脱穀・籾摺り(11月)

脱穀・籾摺り(11月)

写真:しめ縄づくり(12月)

しめ縄づくり(12月)

新梅田シティ里山くらぶ(オフィスワーカー対象)

写真:田植え(6月)

田植え(6月)

写真:夏野菜収穫(7月)

夏野菜収穫(7月)

写真:冬野菜植付(9月)

冬野菜植付(9月)

写真:堆肥置き場づくり(12月)

堆肥置き場づくり(12月)

写真:餅つき(12月)

餅つき(12月)

受賞歴

 「5本の樹」計画のモデルとして「新・里山」「希望の壁」での環境取り組みが多方面で評価され、現在までにさまざまな賞を受賞しています。

2008年

「第2回キッズデザイン賞」(「新・里山」空間を使った地元の子どもたちへの環境教育活動)

主催:特定非営利活動法人キッズデザイン協議会

2009年

「一村一品知恵の環大作戦」全国大会 銅賞受賞

主催:環境省 ストップ温暖化

2010年

第7回「企業フィランソロピー大賞」特別賞

主催:公益社団法人日本フィランソロピー協会

生物多様性

生物多様性

地球上のさまざまな生き物たちの豊かな個性とつながりのこと。食料をはじめ、私たちの日常の暮らしは、この生物多様性に支えられて成り立っている。

保全につながる企業のみどり100選」

主催:財団法人都市緑化機構

2013年

「第7回キッズデザイン賞」受賞(「5本の樹」計画を活用した全国での自然教育活動)

主催:特定非営利活動法人キッズデザイン協議会

2014年

第34回「緑の都市賞」内閣総理大臣賞受賞

主催:財団法人都市緑化機構

2015年

SEGES「都市のオアシス」認定

(快適で安全な都市緑地を提供する取り組みを認定する制度で都市の中で憩いの場となる質の高い緑地空間が認定される)

主催:財団法人都市緑化機構

2016年

「低炭素杯」2017審査員特別賞受賞

主催:低炭素杯実行委員会 後援:環境省、文部科学省、プラチナ構想ネットワーク

2019年

「第9回大阪府みどりのまちづくり賞」ランドスケープマネージメント部門
公益財団法人 国際花と緑の博覧会記念協会長賞受賞

主催:大阪府、公益財団法人 国際花と緑の博覧会記念協会、一般社団法人 ランドスケープコンサルタンツ協会 関西支部