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健康・長寿・豊かさの創出

3. すべての人に保健と福祉を 9:産業と技術革新の基盤をつくろう 11:住み続けられるまちづくりを

基本的な考え方

 積水ハウスグループでは創業以来、安全・安心・快適で高品質な住宅の供給に力を入れ、時代の変化に応じ、災害に強い住まいづくり、環境配慮や快適性を追求した住まいづくりに取り組んできました。これからは次の30年に向けて、ハード・ソフト・サービスの融合により、社会の課題を解決しながら、人生100年時代に向けた「幸せ住まい」づくりを目指します。
 また、グローバル市場においても、長寿社会、成熟社会の先進国である日本で培った技術を活用して社会の課題を解決し、豊かさの創造に貢献します。

活動方針①
「家が健康をつくり出す」をテーマに第1弾として急性疾患早期対応の実現へ

「プラットフォームハウス構想」による健康・長寿の創出
→「HED-net(In-Home Early Detection Network)」の開発

活動報告

「プラットフォームハウス構想」とは

 「『わが家』を世界一 幸せな場所にする」というグローバルビジョンのもと、人生100年時代の幸せをアシストする家として2019年に発表したのが「プラットフォームハウス構想」です。
 「プラットフォームハウス」は、「健康」「つながり」「学び」のさまざまなサービスを住まいにインストールすることで、住まい手のデータをもとにした新たな提案を行う、住まい手が100年間元気で活躍し続けるための仕組みを持った家のことです。
 「健康」「つながり」「学び」は住まい手の無形資産となっていくものであり、これらのサービスを事業として展開しながら人々の無形資産を積み上げていくのが積水ハウスの目指すところです。
 「プラットフォームハウス構想」では、家のあり方について、これまで当社が考えてきた「帰るべき場所」としてだけではなく、「出発すべき場所」でもあるととらえています。「健康」「つながり」「学び」という活力を得て、そこから新しい可能性に向かって出発するための基地という意味で「プラットフォーム」という概念を用いました。
 構想第1弾では、健康こそがすべての土台となるという考えに基づいて、「家が健康をつくり出す」をテーマに「急性疾患」「経時変化」「予防」の三つに取り組んでいます。

図:「プラットフォームハウス構想」の概念図

「プラットフォームハウス構想」の概念図

ロゴマーク:PLATFORM HOUSE

写真:「CES2020」にて「プラットフォームハウス構想」について発表する社長の仲井

「CES2020」にて「プラットフォームハウス構想」について発表する社長の仲井

「HED-Net」により健康長寿社会の課題を解決

 「プラットフォームハウス構想」の第1弾を受けて推進してきたのが、世界初のシステムとなる在宅時急性疾患早期対応ネットワーク「HED-Net(In-Home Early Detection Network)」です。
 脳卒中、心疾患、溺死、転倒・転落による住宅内での死亡者数は年間約7万人と、交通事故の死亡者数(年間3500人程度)をはるかに上回ります。日本での脳卒中の発症者数は年間約29万人、79%が家で発症し、家での死亡者数は約1万5000人に上ります。心筋梗塞は家での発症が66%、浴槽などでの溺死者は年間5000人以上、転倒・転落による死亡者も年間約3000人と、多数です。
 交通事故の死亡者は、エアバッグやABSといった自動車の安全技術の進化により現状まで減少してきました。しかし、家でのアクシデント対応や疾患発症の早期発見対応は、世界的に見てもいまだ取り組まれていないのが現状です。
 例えば脳卒中は発症後4時間半以内に病院で治療を開始できるかどうかが、死亡あるいは後遺症の出る境目であるとされています。つまり治療・回復への重要なカギを握るのが「いかに早期発見するか」ですが、当社ではこの点に着目して、「HED-Net」の研究・開発に着手しました。

住まい手にストレスをかけない非接触センサーで異常を検知

 「HED-Net」は、住まいに設置されているセンシング技術が、住まい手の心拍数、呼吸数などのバイタルデータを検知・解析します。最大の特徴が住まい手にストレスをかけない非接触センサーです。急性疾患発症の可能性がある異常を検知した場合には、すぐ緊急通報センターに通知。オペレーターが呼びかけにより安否確認を行い、救急への出動を要請します。救急隊の到着を確認し、玄関ドアの遠隔解錠・施錠までを一貫して行うという、世界初のシステムです。
 これにより、家庭内事故による社会コスト(医療費・介護費など)の削減は、試算では最大1兆9000億円削減されると期待されます。
 また、日本および先進国をはじめとした世界各国の今後の大きな課題となる高齢化問題において「隠れ介護の問題」への対応がますます重要になってきます。介護が必要になった理由の18.5%が脳卒中によるものであり※1、プラットフォームハウス構想の実現によって、要介護者、介護離職者の減少に貢献したいと考えています。

1 厚生労働省「2013年度国民生活基礎調査」

2020年中にパイロットプロジェクトを始動

「HED-Net」の研究開発に当たっては、産学連携により専門分野に特化した学術機関や企業とパートナーシップを組み、広くアライアンスを構築して進めています。既に日本でのシステム特許を取得し、国際特許を出願中です。
プラットフォームハウスラボでの実証実験、実験棟での実証実験を経て、2020年中には30~50世帯の参加を募集し、人の暮らしに寄り添った環境での「生活者参加型パイロットプロジェクト」を始動。本格的な社会実装を目指します。

建設・建築部門におけるグローバルアライアンス

Global Alliance for Building and Construction, GABCのこと。建設・建築分野における脱炭素化にむけ取り組むために、パリで開催されたCOP21で組織された団体。世界の多くの国や地方行政、NPO、民間企業などが加盟している。日本からは、東京都と、当社が加盟。

第2弾以降の構想は「経時変化」と「予防」

 急性疾患対応の「HED-Net」を起点に、今後は「経時変化」「予防」へと発展させる予定です。
 例えば、睡眠中の呼吸などのデータから無呼吸症候群を検知したり、洗面所の鏡に設置したセンサーで、高血圧などを検知したりといった「経時変化」からのリスク検知によって疾患を早期に発見し、さらにそこから疾患リスクと運動・快眠・食事などの「予防」サービスを提案することが可能になると考えています。そして「健康」に引き続き、「つながり」「学び」のサービスもインストールしていくことによって人生100年時代の幸せ住まいの実現を目指します。

図:在宅時急性疾患早期対応ネットワーク「HED-Net(In-Home Early Detection Network)

TOPICS:「人生100年時代の幸せ」を住宅により実現

「CES2020」に出展
プラットフォームハウス構想 第1弾 世界初の在宅時急性疾患早期対応ネットワーク「HED-Net」をCESで発表

「CES2020」の会場内風景

写真:「CES2020」の会場内風景(1)

写真:「CES2020」の会場内風景(2)

 2020年1月7日から10日にかけて開催された、世界最大級のコンシューマー・エレクトロニクス見本市「CES(Consumer Electronics Show)2020」(米国・ラスベガス)に出展し、世界初のシステムとなる在宅時急性疾患早期対応ネットワーク「HED-Net」を発表しました。

人を見守り、手遅れを防ぐ「HED-Net」

 もし、自宅で一人のときに脳卒中などの急性疾患で倒れてしまったら、自分を、家族を、誰が発見してくれるのだろうか……?
 脳卒中や心疾患を発症したり、住宅内でのアクシデントに見舞われたりした場合、最も大事なのが早期発見です。
 昨年の「CES2019」では、住宅が人生100年時代の幸せを提供する役割を果たすとして健康、つながり、学びといったサービスを提供する「プラットフォームハウス構想」を新プロジェクトとして発表しました。今回発表した「HEDNet」は、これを受けて推進してきたプログラムです。

写真:積水ハウスの展示ブース

積水ハウスの展示ブース

写真:具体的なシステムの紹介

具体的なシステムの紹介

近未来の世界の課題解決を目指す

写真:「HED-Net」について発表する社長の仲井

「HED-Net」について発表する社長の仲井

 1月7日にプレスイベントを行い、社長の仲井は「『プラットフォームハウス構想』の実現によって医療費・介護費などの社会コスト削減が可能であり、超高齢化社会の日本での社会課題解決が、近未来の世界の課題解決に役立つ」と述べました。
 プラットフォームハウス推進部長の石井は「住まい手が今まで通りに生活できることにこだわり、プライバシーやストレスフリーの観点から非接触センサーによる検知・解析を目指した」と、住まい手本位のサービス開発への思いを語りました。
 「これは30年間の長期的構想です。今後30年をかけて『人生100年時代の幸せ』を住宅によって実現します」(社長)。「住宅による幸せを目指す」という理念を追求した構想には多くの関心が集まりました。
 当社展示ブースには、4日間で計約6600人が訪れ、参加者からは、「幸せであること、安全に守られているという安心感は、とても良いと思います」「これはまだ未来の話かもしれませんが、今すぐにでも実現してほしいですね」などの意見が寄せられました。
 今後も実証実験や研究を重ね、先進技術によるイノベーションで「プラットフォームハウス構想」実現のために取り組んでいきます。

写真:世界初のシステムに関心を寄せる参加者

世界初のシステムに関心を寄せる参加者

活動方針②
幸せ研究による豊かさの創出

構造技術開発と幸せ研究の融合 → 「ファミリースイート」の普及・促進

活動報告

幸せ研究から生まれた「ファミリースイート」

 ハード・ソフト両分野の研究開発を推進してきた積水ハウスが、幸せ研究の成果を構造分野の技術開発に生かすことで生まれたのが2018年10月に発売した「ファミリースイート」です。従来のLDKの発想から脱却、家族が思い思いに過ごし、皆がワクワクできる「新しいリビング」を提案しました。
 幸せ研究の調査では、親と子のファミリー世帯が最も重視する時間は「家族のだんらん」であり、家族がリビングで一緒に過ごす時間は長いものの、一緒に居ながら、各自が思い思いのことをして寛いでいる姿が浮かび上がりました。仕切りがない大空間リビングにおいて、互いの気配を感じながら心地よい距離感でつながることで家族が幸せを感じる。これが「ファミリースイート」の考え方であり、幸せ研究の成果でもあります。
 2019年4月、家族が「つながる幸せ」「私らしくある幸せ」「すこやかである幸せ」を提供する「ファミリースイート」は、大空間リビングに広い軒下空間を取り込むことで、より多様な暮らし方提案が可能になり、また、構造(鉄骨造・木造)や内外装のテイストを問わず、あらゆるお客様に選んでいただくことができるようになりました。
 オーナー様からも「居心地が良いので全員が自然に集まって、家族のコミュニケーションが途切れない」という声が聞かれるなど、発売以来、多くの方々の支持をいただいています。

写真:30~40坪の住まいで約30帖の大空間リビングを実現

30~40坪の住まいで約30帖の大空間リビングを実現

「住めば住むほど幸せ住まい」研究のさらなる充実に向けて

 「ファミリースイート」を生んだ幸せ研究を手掛けるのは、2018年8月に開所した「住生活研究所」。企業では日本初となる、幸せを研究する機関です。住まいづくりにおいて、暮らし始めてからの日々やライフスタイルの変化などを考えることはとても大切です。そこで積水ハウスは「人生100年時代」を見据え、時間軸を意識した住まいづくりの重要性に改めて注目しました。
 住生活研究所は「住めば住むほど幸せ住まい」をテーマにして、幅広い住生活分野の研究を開始しました。
 「安全・安心・快適」に加え、「健康」「家族のつながり」などの無形資産といわれる幸せテーマの研究に取り組んでいます。それらの研究成果を住まいづくりに生かすことで、住まい手が幸せに気付き、そして「住めば住むほど」幸福感が高まり、幸せを実感できる「幸せ住まい」を提案していきます。
 2019年は、「ファミリースイート」の考え方を既存住宅に取り入れた「ファミリースイート リノベーション」、都市部での快適な居住を新たに提案した「REGNUM COURT」にもその成果が生かされました。また、関東・住まいの夢工場内のモデルハウス「小林さんち。」において、キッズデザインに関する幸せ研究から生まれた「親子で寝やすい寝室」「ベビーのケアがしやすいサニタリー」といったベビーのいる家族向けの新しい空間提案を取り入れました。

図:「住めば住むほど幸せ住まい」概念図

「住めば住むほど幸せ住まい」概念図